殺人の法定刑の種類は,死刑,無期懲役又は有期の懲役若しくは禁錮である。ただし,禁錮は,自殺関与の場合のみ科し得る。
IV-16表は,昭和41年以降の殺人事犯について,起訴人員及び起訴猶予人員等を年齢層別に示したもの,IV-29図は,そのうちの起訴人員の年齢層別構成比を示したものである。犯罪の性質上,公訴提起率は,極めて高い。また,起訴人員に占める40歳以上の中高年齢層の者の割合が,45年の17.2%から平成2年の52.9%まで,極めて急激に増加していることが分かる。
IV-17表は,最高裁判所の資料により,第一審において殺人(ただし,嬰児殺,殺人予備,尊属殺,同予備及び自殺関与を除く。)により有期懲役刑の判決を受けた者について,実刑判決・執行猶予判決別,年齢層別に,人員と刑期合計とを算出したものであり,この表から,実刑判決について人員別及び刑期合計別に年齢層別構成比を対比して示したものがIV-30図,執行猶予判決について同様に二つの構成比を対比して示したものがIV-31図である。いずれの判決を受けた者について見ても,各年の人員と刑期合計の年齢層別構成比はほぼ同じである。しかし,実刑判決を受けた者について見ると,40歳以上の中高年齢層の者の二つの構成比は,昭和60年までは上昇しているもののその後は必ずしも上昇傾向にあるとはいえない状態にあるのに対し,執行猶予判決を受けた者について見ると,40歳以上の中高年齢層の者の二つの構成比は,いずれも明らかに上昇傾向を示している。このことから,殺人事犯のうち,中高年齢層の者によるものには,より若い年齢層の者によるものより,犯罪性の低いものが相対的に多いことが分かる。
IV-16表 殺人の年齢層別,起訴・起訴猶予別人員(昭和41年,45年,50年,55年,60年〜平成2年)
IV-29図 殺人の起訴人員年齢層別構成比(昭和41年〜平成2年)