昭和41年以降の交通関係業過を除く刑法犯について,犯時の年齢層別検挙人員の推移を示したものが,IV-2表であり,年齢層別構成比の推移を示したものが,IV-2図である。平成2年の検挙人員は,いずれの年齢層においても前年と比べて減少しているが,昭和41年以降の推移を見ると,10代は減少したとはいえ依然高い数値を示し,20代及び30代は激減し,40代及び50代は59年をピークに,60歳以上は60年をピークにそれぞれ漸減傾向にある。刑法犯検挙人員中に占める40歳以上の中高年齢層の者の比率を,昭和41年と平成2年で対比してみると,40代が8.0%から10.9%へ,50代が3.8%から6.5%へ,60歳以上が1.9%から3.9%へとそれぞれ上昇している。年齢層別に見た刑法犯検挙人員の構成比は,20代及び30代が低下し,10代及び40歳以上の中高年齢者が上昇している。少年については第3章で詳述しているので,以下,成人(20歳以上),特に40歳以上の中高年齢層の者に焦点を当てて述べることとする。
IV-2表 交通関係業過を除く刑法犯年齢層別検挙人員(昭和41年〜平成2年)
IV-2図 交通関係業過を除く刑法犯検挙人員年齢層別構成比の推移(昭和41年〜平成2年)
IV-3表 交通関係業過を除く成人刑法犯罪名・年齢層別検挙人員(平成2年)
IV-3表は,平成2年の成人の,交通関係業過を除く刑法犯の罪名別検挙人員(60歳以上の高齢者については,さらに男女別検挙人員)を示したものである。各年齢層別に罪名を見ると,どの年齢層においても,窃盗の占める比率が最も高いが,特に高齢者について見ると,窃盗は71.5%の高率で,次いで,横領(11.7%),詐欺(3.8%)が続き,この三つの罪名で9割近くを占めている。また,女子の高齢者においては,窃盗の占める比率の高さが一段と目立っている。高齢者の窃盗の手口別構成比は,万引き,自転車盗などの非侵入盗が96.6%と圧倒的に高くなっており,高齢者の横領は96.7%が占有離脱物横領である。これらの資料から,高齢者の犯罪は,窃盗,横領及び詐欺など余り体力を必要としない財産犯が主であることが分かる。
IV-3図 窃盗の成人検挙人員年齢層別構成比の推移(昭和41年〜平成2年)
IV-3図は,窃盗の検挙人員につき,IV-4図は,詐欺の検挙人員につき,昭和41年以降の年齢層別構成比の推移を示したものである。いずれも,40歳以上の中高年齢層の者の占める比率が上昇傾向にある。
さらに,凶悪犯を代表する殺人と粗暴犯を代表する傷害について,年齢層別検挙人員構成比の推移を見ると,IV-5図及びIV-6図に示すとおりである。殺人及び傷害においても,40歳以上の中高年齢層の者の占める比率は上昇傾向にあり,特に殺人の上昇率が著しい。
IV-4図 詐欺の成人検挙人員年齢層別構成比の推移(昭和41年〜平成2年)
IV-5図 殺人の成人検挙人員年齢層別構成比の推移(昭和41年〜平成2年)
IV-6図 傷害の成人検挙人員年齢層別構成比の推移(昭和41年〜平成2年)