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 平成 3年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/6 

6 医療及び衛生

 行刑施設には,その規模や業務内容に応じて,医務部又は医務課が置かれ,医師その他の医療専門職員が配置されて,施設における医療及び衛生関係業務に従事している。
 行刑施設における医療体制は,社会の医療内容の高度化・専門化に対応して充実を図る必要があるため,一般社会における医療センター構想にならって,全国に五つの専門的に医療を行う施設(八王子,岡崎及び城野の各医療刑務所並びに大阪及び菊池の各医療刑務支所)が設置されているほか,全国で五つの医療重点施設(名古屋,広島,福岡,宮城及び札幌の各刑務所)が指定され,これらの施設に医療機器や医療専門職員を集中的に配置して,各行刑施設に収容されている者のうち,専門的な医療を要する者及び長期の療養を要する者をこれらの施設に収容し,十分な医療措置が受けられるよう努めている。
 受刑者の診療は:原則として施設の医師によって行われるが,必要な場合には,外部の専門医師の診療を受けさせ,また,施設内で適当な治療を施すことができないときは,施設長の判断で一時外部の病院に入院させ,医療措置に万全を期している。
 近年,中・高年齢受刑者の増加に伴い,高血圧症,動脈硬化症,糖尿病等のいわゆる成人病を有する者が増えていることにかんがみ,成人病の早期発見及びその対策について種々の施策を講じている。
 行刑施設の医療専門職員の定員は,平成2年4月1日現在において,医師226人,薬剤師35人,診療放射線技師20人,栄養±18人,看護士(婦)228人,臨床・衛生検査技師16人であるが,矯正施設における医療専門職員の充実を図る方策として,医師について,昭和36年から矯正医官修学生(医学を専攻する大学生で将来矯正施設に勤務しようとする者に対し,修学資金を貸与し,その者が一定期間矯正施設の医師として勤務すれば返還の債務が免除される。)の制度が設けられている。また,看護士(婦)については,41年に八王子医療刑務所に准看護士養成所が設けられ,開設以来平成3年3月末までに同所を卒業した准看護士(婦)は473人に上る。
 なお,医務部課には,医療専門職員のほか副看守長,看守部長等が配置されている。これらの職員は,診察の受付,診療録の保管,統計等の事務を掌理するとともに,保健医療にかかわる生活指導者(メディカル・ソーシャル・ワーカー)としての役割を担い,病気の受刑者に対し,随時面接指導を行うなどして,これらの者の心情安定を図り保健意識を高め医療専門職員の施す医療処遇が円滑に実施されるよう側面からの援助を行っている。