受刑者の処遇は,入・出所時教育,教科教育,クラブ活動,職業訓練など多くの場面で,民間篤志家の協力を得て行われている。ここでは,そのうち篤志面接委員制度及び宗教教誨について説明する。
(1) 篤志面接委員制度
篤志面接委員制度は,個々の受刑者の抱えている精神的悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などの問題について,民間の学識経験者,宗教家,更生保護関係者等の助言・指導を求めて,その解決を図ろうとするもので,昭和28年に発足した。以来,年々活発となり,重要な処遇手段の一つとして定着しており,受刑者の教育や再犯防止のために優れた成果を挙げている。
篤志面接委員は,学識経験者,宗教家及び更生保護関係者等の中から,矯正施設の長が推薦し,矯正管区長が委嘱するものであり,任期は2年で,再委嘱を妨げない。
平成2年末現在における篤志面接委員数は,II-33表のとおりであり,2年における面接回数は,II-34表のとおりである。委員1人当たりの面接回数は11.4回であり,その面接内容は多岐にわたっている。
篤志面接委員相互の研さんをより深め,連帯をより強化して篤志面接活動の一層の充実を期するために,各施設単位の研究協議会が開催され,さらに高等裁判所の管轄区域に対応して置かれている矯正管区単位で,講演,協議,研究発表,事例研究等を内容とする積極的な研さん活動が続けられてき,たが,篤志面接活動のより一層の充実を図るためには,全国的規模での組織化が必要であるとの気運が高まり,昭和62年11月に「全国篤志面接委員連盟」が発足した。これにより,全国的規模で実施する研修の機会の拡充と委員相互の連帯の強化等が図られることになり,また,各矯正管区単位の篤志面接委員協議会においても研さん活動の強化に努めることとされ,今後の発展が期待される。
II-33表 篤志面接委員数(平成2年12月31日現在)
II-34表 篤志面接相談内容別実施回数(平成2年)
(2) 宗教教誨
宗教教誨は,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者の宗教的要求を充足し,宗教的自由を保障するために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)により実施されている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養うとともに,心情の安定を図り,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期刑の受刑者はもとより,短期刑の受刑者に対しても,優れた成果を挙げている。
教誨師が正式に制度化されたのは,明治14年の監獄則改正のときで,以降,日本国憲法制定までの間は,官吏の身分を有する教誨師が施設に常駐していたが,現在は民間の篤志宗教家が教誨師として活躍している。ほとんどの教誨師は,施設単位又は都道府県単位で教誨師会を組織し,これに加入している。全国組織として,財団法人「全国教誨師連盟」があり,また,各矯正管区単位に地方教誨師連盟がある。
II-35表 宗教教誨実施状況(平成2年)
平成2年末現在における教誨師数は,1,480人であり,宗派別の内訳は,仏教66.2%,神道20.4%,キリスト教13.4%となっている。2年中における宗教教誨の実施状況は,II-35表のとおりであり,教誨師1人当たりの教誨回数は9.6回となっている。