第3節 捜査・司法の国際共助 外国の裁判所から我が国の裁判所に対し,外交機関を経由するなど一定の条件を具備した嘱託がなされたときは,我が国の裁判所は,外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法(明治38年法律63号)に基づき,民事及び刑事の訴訟事件に関する書類の送達及び証拠調べにつき,国内法に従って法律上の「輔助」を行うこととされているが,最高裁判所刑事局の資料によれば,平成2年においては,刑事の訴訟事件に関し,証人尋問の嘱託を受けたものがアメリカの裁判所から2件及びトルコ共和国の裁判所から1件の合計3件あり,また,書類の送達の嘱託を受けたものがドイツの裁判所から1件あり,これらは,いずれも,同年中に同法に基づいて処理されている。なお,同年中に,刑事の訴訟事件に関して,我が国の裁判所から外国の裁判所に対して嘱託したものはない。 次に,犯罪の捜査共助等は,外国又は国際刑事警察機構(ICPO)から要請がなされた場合に,国際捜査共助法(昭和55年法律69号)に基づいて行われている。同法では,外国から刑事事件の捜査に関して共助の要請があった場合に,[1]原則として外交機関を通じて要請されたものであること,[2]政治犯罪でないこと,[3]捜査の対象となっている行為が日本国内で行われた場合,日本国の法令上罪に当たること,[4]相互主義の保証の下で要請されたものであることなどを要件に,当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠を提供することとされている。 法務省刑事局の資料によれば,平成2年においては,中国,フランス,アメリカ及びカナダから,証拠物の提供,関係者の証人尋問実施依頼等合計12件の捜査共助の要請を受け,このうち10件については,同年中に同法に基づいて処理しており,他方,我が国から,フィリピン共和国,オーストラリア及びアメリカに対して証拠物の押収・提供,関係者の宣誓供述調書の作成依頼等合計5件の捜査共助の要請をし,このうち1件については,同年中に正式回答を受けている。
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