第2節 犯罪者の国外逃亡 警察庁刑事局の資料によれば,日本国内で犯罪を犯して国外に逃亡している被疑者は,平成2年末現在で294人であり,前年に比べて4人(1.4%)増加している。この内訳は,刑法犯の被疑者186人,特別法犯の被疑者108人であり,このうち78人(総数の26.5%)は,覚せい剤取締法違反,麻薬及び向精神薬取締法(平成2年8月24日以前は麻薬取締法)違反及び大麻取締法違反の被疑者である。国外逃亡者の国籍(地域を含む。以下,本章において同じ。)を見ると,日本が85人(総数の28.9%)で最も多く,次いで台湾の37人(同12.6%)及び韓国の32人(同10.9%)となっており,日本を含めたアジアの国籍の者が合計267人で,総数の90.8%を占めている。 法務省刑事局の資料によれば,平成2年中に我が国が外国に対して犯罪人の引渡しを正式に要請した事例は,オーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)に対する所得税法違反事件の1件1名及びアメリカに対する公職選挙法違反事件の1件1名の合計2件2名であるが,いずれも同年中には身柄の引渡しを受けるに至っていない。 また,平成2年中に我が国が外国から犯罪人の引渡しの正式請求を受けた事例は,中華人民共和国(以下「中国」という。)から請求のあった中国民航機ハイジャック事件の1件1名,アメリカから請求のあったヘロイン密輸入・所持事件の1件1名及び業務上横領事件の1件1名の合計3件3名であり,このうち中国民航機ハイジャック事件及びヘロイン密輸入・所持事件については,同年中に身柄の引渡しを完了している。
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