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 平成 3年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/2 

2 収賄事犯

 公務員犯罪の中でも,収賄事犯は,公務の公正に対する一般国民の信用を損ない,遵法意識の低下を招くなど,その及ぼす影響は計り知れない。この種事件は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられることから,当事者だけで隠密裏に行われることが多い上,特定の被害者が存在しないことなども加わって,極めて潜在性が強い。この種事件の傾向を,単年度の統計で推し量ることは適当ではないので,最近10年間に収賄罪で検挙された公務員(みなす公務員を含む。)全員につき,これを昭和56年から60年までの5年間(以下,本節において「前期」という。)と,61年から平成2年までの5年間(以下,本節において「後期」という。)に分けて比較してみる。
 I-35表は,公務員の種類別に,前期と後期とを比較したものである。これによれば,検挙人員総数は,前期に比べて後期が366人(36.1%)減少しており,減少傾向を示しているといえる。
 平成2年中に警察が検挙した事件の賄賂総額は2億1,025万円(前年より2億192万円,49.0%減),収賄者1人当たりの賄賂額は198万円(前年より157万円,44.2%減)となっている(警察庁刑事局の資料による。)。

I-35表 収賄公務員の種類別検挙人員(昭和56年〜60年,61年〜平成2年)

 I-36表は,昭和60年から平成元年までの5年間における収賄事件の第一審裁判所の科刑状況を見たものである。元年中に懲役刑に処された者のうち,懲役1年以上の刑に処された者の比率は,過去5年間で最も高くなっている。なお,元年に収賄事件で有期懲役刑の実刑を言い渡された人員は10人で,その内訳は,刑期が1年以上2年未満の者が4人,刑期が2年以上3年未満の者が4人,刑期が3年の者が1人,刑期が3年を超え5年以下の者が1人となっている(司法統計年報による。)。

I-36表 収賄事件の第一審科刑状況(昭和60年〜平成元年)