フランスの犯罪少年に関する少年司法制度は,少年法(犯罪少年に関する1945年2月2日オルドナンス(Ordonnance))等によって定められている。少年による犯罪は,専門裁判所である少年係判事(Juge des enfants,18歳未満の少年が犯した第5級違警罪及び軽罪事件を管轄する。),少年裁判所(Tribunal pour enfants,18歳未満の少年が犯した第5級違警罪及び軽罪事件並びに16歳未満の少年が犯した重罪事件を管轄する。)及び少年重罪法院(Cour dassise des mineurs,16歳以上18歳未満の少年が犯した重罪事件を管轄する。)の3種類の裁判所が管轄するが,違警罪第4級までの軽微な犯罪については,成人と同様,違警罪裁判所(Tribunal de police)が管轄する。
フランスでは,少年犯罪事件について検察官がいわゆる先議権を持っており,裁判にも立ち会っているという点で,我が国と事情が異なる。検察官が行う不起訴処分(dassement sans suite)には,我が国でいう起訴猶予も含まれる。
フランスの少年司法で特徴的なことやもう一つに,少年裁判所及び少年重罪法院は,有罪と認定した少年に対して,原則として再教育処分(mesures de reeducation)又は刑事処分(peine)のいずれか一方を選択的に言い渡すことができ,少年司法手続が一元化されていることが挙げられる。再教育処分としては,訓戒(admonestation),両親・後見人等への委託(remise aux parents,tuteur,gardien ou personne digne de confiance),資格を持つ公立又は私立の教育・職業訓練施設への収容(remiseaun etablissement de formation professionnelie),資格を持つ医療又は医療教育機関への収容(remise a un etablissement medical oumedico-pedagogique)などがある。なお,このほかに,1975年7月11日の法律により設けられ,1945年のオルドナンスに組み込まれた処遇として,司法的保護処分(protection judiciaire)がある。これは,少年裁判所及び少年重罪法院が,16歳以上の犯罪少年に関して再犯予防が必要とされるときには,5年を超えない期間司法的保護に付すことを言い渡すことができるというものである。このことによって,司法的保護処分を言い渡された少年については,18歳に達した後も21歳まで,教育・職業訓練施設への収容,医療又は医療教育機関への収容等を命じることができるようになった。他方刑事処分としては,罰金,拘禁刑がある。なお,13歳未満の触法少年には,刑事処分を科すことはできず,再教育処分の決定だけを行うことができる。
III-119表 特定罪種別検挙人員・少年比及び人口比フランス(1980年,1986年〜1988年)
また,フランスの少年司法には,犯罪少年のほかに要保護少年(mineurs en danger)のための裁判の制度があり,まだ犯罪は犯していないが身体的又は精神的に危険な状態にあり,その教育が重大な危険にさらされている21歳未満の者に対して,教育的援助処分(mesures dassistance educative)を行うことができる。