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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第6章/第2節/3 

3 少年司法の運用

 既に述べたように,韓国においては1988年に少年法等が改正され,1989年に実施に移されているが,ここでは他国との比較等を考慮して,主として1988年までの運用状況を見ることにする。
 韓国の少年司法の運用状況で,我が国のそれと異なるところは,検事の先議制度の下に起訴猶予が大幅に用いられていることである。1988年における検事による処理状況を構成比で見ると,少年刑法犯検挙人員のうち,刑事事件として起訴された者が39.3%(うち公判請求19.1%,略式請求20.2%),少年部に送致された者が9.1%で,半数を超える51.6%が不起訴処分(うち起訴猶予が30.4%)に付されている。しかし,既に述べたように,検事が起訴を猶予する際に,「善導付起訴猶予」という実務上の運用が行われており,1988年には,全国に5,084人の善導委員を擁し,7,521人の少年の善導付きの起訴猶予が行われている。

III-111表 第一審少年刑事公判事件科刑状況韓国(1988年)

 III-111表は,1988年における第一審少年刑事公判事件の科刑状況を見たものであるが,定期刑1,212人(7.3%),不定期刑3,699人(22.2%),執行猶予4,845人(29.1%)等となっている。
 1988年に家庭法院(ソウル以外の地域では地方法院)の少年部が受理した少年は,合計1万8,000人を超えている。
 保護処分の内訳を見ると,
 [1] 保護者又は適当な者への監護の委託      15,459人
 [2] 少年保護団体,寺院又は教会への監護の委託    606人
 [3] 少年院送致                  1,464人
 [4] 保護観察                   6,692人
 となっている。ただし,保護観察は,通常,保護者などへ監護を委託する際に付随処分として用いられていることが多い。
 非行少年の施設は,全国で2か所の少年矯導所(25歳未満の受刑者を収容するもので,我が国の少年刑務所に当たる。)及び11か所の少年院がある。1988年末現在の少年矯導所少年受刑者数は1,740人,少年院収容者数は1,825人となっている。少年院に少年が収容される期間の平均は,15.1月である。なお,我が国と同様に,少年の資質を調査・鑑別するための施設である少年鑑別所が,4か所に設置されている。
 1983年以来,少年矯導所や少年院からの仮釈放者に対して実験的に実施されてきた保護観察は,徐々にその実施地域と対象を拡大し,1989年7月から保護観察法の制定とともに全国に実施されることとなった。