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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第6章/第3節/1 

第3節 西ドイツ

1 少年非行の動向

 西ドイツの連邦刑事局は,,1984年以降,検挙人員に関する統計の取り方を改め,同一人が同一年に複数回検挙されても,検挙人員一人としているので,ここでは,1984年以降の統計について見ることとする。
 III-61図は,1984年から1988年までの5年間の刑法犯検挙人員について,その総数,18歳未満の少年及び21歳未満の青・少年の検挙人員の推移を見たものである。III-112表には,同期間における刑法犯について,検挙人員総数,少年・青年別検挙人員,少年比,青年比及び少年,青年,成人の各人口比等が示してある。
 検挙人員総数は,最近5年間で4.8%の増加が見られるのに対し,少年の検挙人員は,5年間に約22万人から約17万人へと22.7%減少し,少年比も,17.8%から13.1%へと4.7ポイント低下している。青年の検挙人員も,少年ほどの急減ではないが,1987年から2年続けて減少が見られる。この結果,青・少年の検挙人員は,5年間に約37万人から約31万人へと15.6%減少し,青・少年比は29.7%から23.9%へと5.8ポイント低下した。

III-61図 刑法犯検挙人員の推移西ドイツ(1984年〜1988年)

III-112表 刑法犯検挙人員・少年比・青年比及び人口比西ドイツ(1984年〜1988年)

 しかし,人口比を見ると,少年では32.6から33.0と,ほぼ横ばいであり,青年では,1984年の46.0から1986年まで若干上昇したが,以降はやはり横ばいであり,1988年には48.0となっている。すなわち,青・少年検挙人員の減少は,青・少年人口の減少に負うところが大きく,青・少年の人口に占める検挙人員の比率には,最近5年間で大きな変動はないといえる。一方,成人の人口比は,やや上昇傾向はあるがおおむね横ばいであり,1988年は21.2となっている。同年の少年の人口比は成人のそれの1.6倍,青年の場合は同じく2.3倍である。
 III-113表は,特定6罪種について,III-112表と同様最近5年間の検挙人員総数,少年・青年別検挙人員,少年比,青年比及び少年,青年,成人の各人口比等について示したものである。少年は殺人及び放火を除き,青年では放火を除いて,検挙人員及び少年比,青年比はおおむね逐年逓減している。特に青年においては,強姦による検挙人員は5年間で37.5%も減少しており,殺人,強盗など,凶悪犯罪の検挙人員の減少も著しい。
 青年の人口比は,傷害及び放火で年次による変動が認められるほかは,おおむね低下傾向にある。しかし少年の人口比の場合は,殺人や強姦,窃盗でおおむね横ばいである反面,強盗,傷害及び放火は,ここ数年むしろ上昇傾向にある。
 なお,西ドイツ国内には,1988年末現在,約449万人の外国人(総人口の約7%)が滞在しており,その多くは労働者及びその家族であるが,警察の犯罪統計(Polizeiliche Kriminalstatistik,1988)によれば,近年ドイツ人青・少年の検挙人員が急減しているのに対し,外国人青・少年のそれはかなりの増加を示し,特に14歳以上18歳未満の少年に,この傾向が著しい。外国人の青・少年検挙人員は,1984年の6万1,619人から1988年には7万5,731人へと増加し,青・少年検挙人員に占める外国人の割合は,同じく16.5%から24.1%へと上昇した。