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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第6章/第2節/2 

2 少年司法制度

 次に,韓国の少年司法制度について,同国の「少年法」及び「少年院法」に基づき,韓国法務研修院発行の「犯罪白書」(1989年版)等を参考にしながら述べることにする。ただし,韓国においては,19)88年12月31日少年法及び少年院法が改正され(両法とも1989年7月1日施行),それに加えて,1989年7月に新たに保護観察法が制定・施行されたことにより,少年司法制度は,保護処分の種類,期間等で変更がなされている。

III-110表 特定罪種別送致人員・少年比・青年比及び人口比韓国(1980年,1986年〜1988年)

 韓国の少年法による少年は,20歳未満と定義されている(以下本節においては,韓国の法制度に従い,20歳未満の者を少年ということとする。)。審判の対象となるべき非行少年は,「触法少年」(12歳以上14歳未満),「犯罪少年」(14歳以上20歳未満)及び「虞犯少年」(12歳以上20歳未満)に分類されており,年齢区分がやや異なっているほかは,我が国とほぼ同様である。
 少年の審判は,家庭法院(我が国の家庭裁判所に相当する。)少年部又は地方法院(我が国の地方裁判所に相当する。)少年部(以下,両者を合わせて「少年部」という。)で行われるが,我が国と異なるのは,我が国では原則として家庭裁判所へ事件を全件送致することになっているのに対し,韓国では検事先議制度をとっていることである。すなわち,14歳以上の犯罪少年は,成人の刑事事件と同様に検事に送致され,検事が保護処分を受けさせるために事件を少年部に送致するか,刑事処分を受けさせるために地方法院に起訴するかを決定する。検事は,一般の刑事事件と同様に起訴猶予の処分を行うこともでき,起訴を猶予するに当たり,「善導付起訴猶予」という実務上の運用を行うことがある。これは,更生の見込みのある少年について起訴又は少年部送致を一定期間猶予し,その間,本人の同意の下に,地域社会で学識及び徳望を有する善導委員といわれる人々の指導にゆだねるものである。
 保護処分の種類については,改正前の少年法によると,[1]保護者又はその他適当な者(改正後は,保護者に代わる者)に監護を委託すること,[2]少年保護団体・寺院又は教会の監護に委託すること,[3]病院その他療養所に委託すること,[4]感化院に送致すること,[5]少年院に送致すること,[6]保護観察に付することの6種類が定められていたが,改正後は,[2]及び[4]が廃止され,新たに,短期保護観察に付すること,児童福祉施設・少年保護施設に監護を委託すること,短期少年院に送致することの3種類が加えられ,7種類となった。また,16歳以上の少年に対しては,保護観察処分と合わせて,社会奉仕命令又は受講命令を行うことができることになっている。保護処分の期間については,改正前の少年法では定めがなかったが,改正後は,保護者や他の機関への委託,短期保護観察及び短期少年院送致の期間は,原則として6か月,保護観察の期間も原則として2年と定められた。
 少年に対する緩刑処分としては,犯時18歳未満(改正前の少年法では16歳未満)の少年を,死刑又は無期刑に処するときには15年の有期懲役を科することとし,また,少年が法定刑長期2年以上の有期刑に該当する罪を犯したときには,その法定刑期の範囲内(長期は10年,短期は5年を超えない。)で不定期刑を言い渡すものとしている。なお,仮釈放に関しても,早期に仮釈放が許されるための例外規定が定められている。
 改正後の少年院法は,少年院の種類を機能別に分けて,教科教育少年院,職業訓練少年院,女子少年院,特別少年院とし,矯正効果の増大を図っている。教科教育少年院では,教科教育を履修した少年に対し,出身中学校長名義の卒業証書を授与できるし,職業訓練少年院では,職業訓練のために工場などの外部施設への通勤を幅広く認めている。