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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第1節 

第5章 非行少年の処遇

第1節 概  説

 本章では,警察等の捜査機関(以下「警察等」という。)や一般人によって検挙,補導又は発見された非行少年が,その後,警察,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階で受ける処遇の実情を紹介する。
 III-47図は,非行少年に対する処遇の流れを示したものであり,その概要は,次のとおりである。
 警察等は,犯罪少年(交通反則金納付事件に係るものを除く。)を検挙した場合,罰金以下の刑に当たる犯罪の場合には直接家庭裁判所に送致し,それ以外の犯罪の場合は検察官に送致する。
 犯罪少年の事件の送致を受けた検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の嫌疑があると思料するとき,又は,犯罪の嫌疑がない場合でも虞犯等家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,処遇意見を付けて事件を家庭裁判所に送致する。
 14歳以上の虞犯少年については,これを発見した者が直接家庭裁判所に通告又は送致しなければならないが,18歳未満の場合には,警察官又は保護者が児童相談所に通告できる場合がある。
 触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,児童福祉法上の措置を優先させることになる。すなわち,同法によれば,保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は,これを都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされている。
 家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付することかできる。

III-47図 非行少年処遇の流れ

 家庭裁判所では,まず少年に関する調査を実施するが,調査及び審判に資するため,少年を少年鑑別所に送致して資質鑑別を求めることがある。調査又は審判の後,知事又は児童相談所長送致(18歳未満の少年に限る。),審判不開始,不処分,保護観察,教護院・養護施設送致,少年院送致,検察官送致(16歳以上の少年に限る。)の決定がなされる。このうち,保護観察,教護院・養護施設送致及び少年院送致は,家庭裁判所が行う保護処分であり,保護観察に付された少年は,保護観察所の保護観察官及び民間の篤志家である保護司の指導監督を受け,改善更生が図られる。教護院・養護施設送致となった少年は,児童福祉法による施設である教護院(不良行為をなし,又は,なすおそれのある児童を教護することを目的とする施設)又は養護施設(保護者のない児童,虐待されている児童等の養育保護を行う施設)に,また,少年院送致となった少年は,少年院にそれぞれ収容される。
 検察官送致は,刑事処分を相当として事件を検察官に送致する処分で,逆送とも呼ばれている。この逆送事件については,検察官は原則として起訴することとなっている。起訴された少年に対するその後の処遇の流れは,成人の場合と同様であるが,犯行時18歳未満の者に対する死刑及び無期刑の緩和,懲役及び禁錮に関する不定期刑(刑の長期と短期を定める。)の採用,成人と区別された少年刑務所等で処遇するととなどが定められている。
 家庭裁判所で保護観察に処せられた少年のほか,少年院を仮退院した少年,起訴され刑の執行を猶予され保護観察に付された少年,及び,実刑となり少年刑務所等の行刑施設で刑の執行を受け仮出獄した少年は,保護観察に付され,保護観察官及び保護司の指導監督下で,改善更生と社会復帰が図られる。