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1 家庭環境 ここでは,まず,子どもに対する家庭の保護的・教育的機能などに障害を与えやすい要因として従来から指摘されている保護者の経済的生活程度や実父母の有無などを取り上げ,少年非行の背景等について見ることとする。
犯罪少年の家庭の経済状況について見ると,III-18表のとおりで,生活程度が中以上の者は9割前後を占めており,豊かな社会における生活水準の向上に伴う,いわゆる非行の一般化という現代社会の非行の特質を示している。 III-18表 犯罪少年の親の生活程度別構成比(昭和55年〜平成元年) 次に,犯罪少年の実父母の有無について見ると,III-19表のとおりである。最近の特徴としては,実父母のそろっている者の比率が下降傾向にあるとともに,親の別居,離婚などにより親の一方を欠いたり,継父(母)のいる家庭の比率が上昇傾向にあり,この比率が,昭和55年に20.4%であったものが,60年には25.5%,平成元年には27.5%となっていることが注目される。犯行時における親との同居の有無を見ると,III-20表に示すとおりである。この表によると,親と同居している者の比率は,この10年間90%台の比率で推移しており,平成元年には91.8%となっている。なお,これを年齢層別に見ると,14歳・15歳の年少少年及び16歳・17歳の中間少年が,それぞれ,96.2%,92.2%と高く,18歳・19歳の年長少年は78.7%と低くなっている。 III-19表 犯罪少年の実父母の有無別構成比(昭和55年〜平成元年) III-20表 犯罪少年の親との同居の有無別構成比(昭和55年〜平成元年) III-21表は,先に見たIII-19表の中から,両親なし又は両親不明で,かつ,監護者が全くない者を除いた最近10年間における犯罪少年の親の養育態度について見たものである。これによれば,平成元年における親の養育態度は,「放任」が46.7%で最も高く,以下,「甘やかし・過保護」22.4%,「厳格」14.0%,「監護能力なし」3.4%の順となっており,どの年次を見ても,親の養育態度は,常に「放任」が最も多い。もっとも,10年前と比較すると,「放任」の占める比率は61.4%から46.7%へと減少し,「厳格」は7.6%から14.0%へと漸増傾向にある。これを犯行時の年齢層別に見ると,III-22表に示すとおり,14歳・15歳の年少少年では,「甘やかし・過保護」の比率が23.7%と比較的高く,年齢が高くなるにつれて低くなり,18歳・19歳の年長少年では17.8%となっている。これらの資料を見ると,かつていわれた,非行少年には,両親のない経済的にも恵まれない劣悪な家庭環境にある者が多いという現象は薄れ,比較的両親のそろった経済的にも普通の家庭の少年が多いという,いわゆる一般化現象が裏付けられるが,子女に対する家庭の基本的な保護的・教育的機能の低下しているものが少なくないことを示すものといえよう。 |