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2 学校・職場 文部省の「学校基本調査報告書」によれば,平成元年の我が国における義務教育就学率は,ほぼ100%に達し,義務教育修了者の定時制を含む高等学校進学率は94.1%に達しており,さらに,高等学校卒業者の短期大学を含む大学進学率は36.3%となっている。このような上級学校への進学率の上昇に伴って,勤労少年の数は減少している。
III-23表は,最近5年間における交通関係業過を除く少年刑法犯について,中学生・高校生別検挙人員と,その在学生1,000人当たりの比率を見たものである。平成元年について見ると,中学生の検挙人員は8万6,692人で,前年より1万2,715人(12.8%)の減少,高校生の検挙人員は6万1,444人で,前年より9,194人(13.0%)の減少となっている。検挙人員の在学生1,000人当たりの比率は,中学生で15.4,高校生で11.2となっている。 III-21表 犯罪少年の親の養育態度別構成比(昭和55年〜平成元年) III-22表 犯罪少年の年齢層・親の養育態度別構成比(平成元年) III-23表 少年刑法犯の中学生・高校生別検挙人員及びその在学生に対する比率(昭和60年〜平成元年) III-24表は,最近10年間における犯罪少年の学職別構成比を示したものである。平成元年における犯罪少年の学職別構成比は,学生・生徒が65.1%で最も高く,有職者が18.9%,無職者が15.9%で,学生・生徒の占める割合が圧倒的に大きい。昭和55年と比べると,学生・生徒は68.8%から65.1%へ,有職者は19.1%から18.9%へと,それぞれわずかに減少し,無職者は12.0%から15.9%へと増加していることが注目される。平成元年の学職別に見た犯罪少年の罪名別構成比は,III-25表に示すとおりである。有職,無職,学生・生徒を問わず,窃盗の占める比率は高いが,特に学生・生徒は70.7%と高く,有職者は45.8%と低くなっている。暴行,傷害,脅迫,恐喝を合わせた粗暴な犯罪は,有職者が12.2%,無職者が11.4%,学生・生徒が8.9%の順に低くなり,強姦は,有職者,無職者,学生・生徒の順になっているが,いずれも1%に満たない。 III-24表 犯罪少年の学職別構成比(昭和55年〜平成元年) III-25表 犯罪少年の学職・罪名別構成比(平成元年) III-26表は,最近5年間における犯罪少年の学生・生徒の通学状況と学業成績の関係を示したものである。通学状況に問題がない者,時々欠席はするが通学している者,ほとんど通学していない者に分けて学業成績を見ると,昭和55年以降大きな変化はなく,総じて,犯罪少年の学業成績は「下」とされているものが多く,平成元年について見ると,通学に問題のない者では,学業成績が「中」以上の者が68.1%で,「下」の者が31.9%となっているが,通学状況に問題のある少年では,この比率が逆転し,時々欠席している者では,学業成績が「中」以上の者が24.4%と激減し,「下」が75.6%となり,ほとんど欠席している者では95.5%が学業成績は「下」となっている。また,昭和50年代に入って社会の耳目を引くようになったものに,校内暴力事件がある。III-27表は,最近10年間における校内暴力事件の検挙状況を見たものである。55年に1,558件を数えた校内暴力事件は,次第に減少し,平成元年の検挙件数は939件で,前年に比べ4件(0.4%)減少したが,検挙人員は70人(2.7%),被害者数は108人(7.2%),それぞれ増加した。なかでも教師に対する暴力事件は579件で,前年に比べ36件(6.6%)増加し,検挙人員は87人(10.1%)の増加となっている。 III-26表 犯罪少年の通学状況・学業成績別構成比(昭和60年〜平成元年) III-27表 校内暴力事件の検挙状況(昭和55年〜平成元年) 有職者による非行は,III-24表で示したように,減少又は横ばい傾向にあるが,III-28表は,平成元年における有職少年の職業別分布を10年前の昭和55年と対比したものである。平成元年の職種別構成比を見ると,工員が27.0%で最も多く,以下,店員20.6%,職人14.8%,作業員・建設労働者14.4%,サービス業6.6%などとなっているが,昭和55年と比べると,工員,サービス業等は減少し,作業員・建設労働者,職人,店員,運転(助)手などがわずかに増加している。なお,有職者の転職の有無について見ると,総数の52.0%と過半数の者が転職経験者である。III-28表 犯罪少年中の有職者の職種別構成比(昭和55年,平成元年) |