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 平成 2年版 犯罪白書 第1編/第4章/第5節 

第5節 日本人の国外における犯罪と被害

 日本人の出国者数は,法務省入国管理局の資料によれば,昭和55年以降年々増加を続けており,平成元年には966万2,752人(前年より123万5,885人・14.7%増)となっている。これを,渡航先別に見ると,アメリカが34.2%で最も多く,以下,韓国(11.5%),台湾(10.5%),香港(8.8%),シンガポール(5.1%)などとなっている。前年と比較した増加率で最も高いのは,スペインの28.6%(1万1,732人増)で,次いで,タイの27.0%(5万7,115人増),エジプトの24.3%(4,491人増),シンガポールの24.1%(9万6,040人増),韓国の22.8%(20万6,894人増)などが目立っている。警察庁刑事局の資料によれば,最近5年間の日本人の国外における犯罪について,警察庁が外務省及び国際刑事警察機構等を通じて通報を受理した件数は,I-75表のとおりである。通報受理件数は,平成元年には前年より22件(15.9%)減少して116件となっており,その内訳を見ると,麻薬・覚せい剤関係法令違反が前,年より2件減少したものの35件で最も多く,以下,関税・為替管理関係法令違反が前年より15件増加して26件,詐欺・偽造が16件,出入国管理関係が13件などとなっている。これを日本人が犯罪を犯した地域別に見ると,アメリカが前年より18件(34.0%)減少したものの35件で最も多く,次いで,韓国が前年より14件(350.0%)増加して18件,,フィリピンが14件,タイが12件,香港,インドネシア,イギリス,ニュージーランドがそれぞれ4件などとなっている。

I‐75表 日本人の国外における犯罪の態様別通報受理件数(昭和60年〜平成元年)

I-76表 日本人の国外における犯罪被害人員(昭和62年〜平成元年)

 一方,外務省領事移住部の資料によれば,最近3年間に,日本人が国外で被った犯罪被害は,I-76表のとおりである。犯罪被害を被った者は,日本人の出国者数の増加に伴って逐年増加しており,平成元年では,前年より1,260人(25.0%)増の6,293人となっている。これを犯罪の罪種別に見ると,強盗・窃盗その他の財産犯が6,173人,傷害・暴行が47人,殺人が17人であり,被害者のうち,死亡した者は23人(殺人による者13人を含む。)である。国別に見ると,アメリカにおける被害が1,984人で最も多く,以下,フランスの576人,イタリアの535人,タイの314人,スペインの293人,西ドイツの282人などとなっている。なお,これらの犯罪被害の状況は,在外公館において行った日本人の被害者に対する援護事務について,在外公館から外務省領事移住部へ報告のあったものに基づいている。被害者が在外公館に被害を届け出るのは,主として旅券の再発給や家族の呼び寄せのための便宜供与等,在外公館に何らかの援助を依頼する場合であり,在外公館に届け出のない犯罪被害も少なくない。また,現地の警察が受理した日本人の被害状況を在外公館に通報する制度はないため,被害の実数は上記の人員を相当上回るものと思われる。