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 平成 2年版 犯罪白書 第1編/第4章/第4節 

第4節 外国人の日本における犯罪と被害

 外国人登録法に基づく登録者及び外国人入国者は,いずれも逐年増加を続けている。I-69表は,昭和55年,63年及び平成元年における外国人登録法に基づく登録者数及び外国人入国者数を,国籍別に示したものであるが,元年12月末日現在の登録者総数は,前年より4万3,450人(4.6%)増加して98万4,455人であり,他方,元年中の入国者総数は,前年より57万1,317人(23.7%)と大幅に増加して298万5,764人となっている。
 I-70表は,平成元年における外国人の交通関係業過及び道交違反を除く検察庁新規受理人員を罪名別及び国籍別に見たものである。新規受理人員総数は,前年に比べて1,047人(9.1%)減少し,1万456人となっており,罪名別に受理人員の多いものを見ると,窃盗2,782人,傷害1,228人,出入国管理及び難民認定法違反905人,外国人登録法違反861人,覚せい剤取締法違反645人などとなっている。なお,前年に比べて増加した罪名は,出入国管理及び難民認定法違反(301人・49.8%増),傷害(31人・2.6%増),麻薬取締法違反(30人・83.3%増)などである。国籍別では,韓国・朝鮮が7,134人(68.2%)で最も多く,以下,中国の1,010人(9.7%),フィリピンの465人(4.4%),アメリカの417人(4.0%)の順となっている。

I‐69表 国籍別外国人登録者・入国者数(昭和55年,63年,平成元年)

I-70表 外国人の罪名・国籍別検察庁新規受理人員(平成元年)

 I-71表は,地方入国管理局において,出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制手続がとられた事例について,最近5年間の退去強制事由別摘発人員を見たものである。退去強制手続をとられた者の総数は,ここ数年急増し,平成元年は,前年より4,772人(26.7%)増の2万2,626人に上っている。これを事由別に見ると,不法残留の1万9,105人(前年より3,135人・19.6%増)が摘発者総数の84.4%を占めて最も多く,以下,不法入国の2,349人(同1,733人・281.3%増),資格外活動の696人(同143人・17.0%減),不法上陸の258人(同109人・73.2%増)の順となっている。なお,元年における不法入国の激増は,ヴィエトナム人ボートピープルを装った中国人等の集団不法入国事件によるものである。

I-71表 退去強制事由別摘発人員(昭和60年〜平成元年)

 ところで,不法残留の83.3%に相当する1万5,912人は,資格外活動がらみの不法残留者であり,この人員と資格外活動だけで摘発された者を合わせた人員は1万6,608人(同2,294人・16.0%増)となり,摘発者総数の73.4%を占めている。I-72表は,資格外活動者及び資格外活動がらみの不法残留者につき,過去5年間の男女別摘発人員と平成元年に摘発された者の活動の内容を見たものである。昭和62年までは女子が総数の60%以上を占めていたが,63年には男子の急激な増加によって男女の.比率が逆転し,男子が総数の62.4%を占めるようになり,平成元年には更にその割合が上昇して71.0%に上っている。資格外活動のほとんどは不法就労であり,その稼働内容な見ると,建設作業員,工員,ホステス,給仕及びストリッパーで85.9%を占めている。

I‐72表 資格外活動者及び資格外活動がらみの不法残留者の活動内容(昭和60年〜平成元年)

I-73表 外国人新受刑者の国籍別人員(昭和63年,平成元年)

 I-73表は,裁判が確定して新たに我が国の行刑施設に入所した外国人の数を見たものである。平成元年における外国人新受刑者は,前年より75人(8.8%)減少して780人となり,これは新受刑者総数2万4,605人の3,2%に当たるが,この比率は前年よりわずかに上昇している。国籍別では,韓国・朝鮮が621人で最も多く,外国人新受刑者の79.6%を占めており,次いで,中国の46人(5.9%),アメリカの20人(2.6%)と続いている。

I-74表 外国人が被害者である刑法犯の認知件数(昭和60年〜平成元年)

 I‐74表は,最近5年間に,日本国内において外国人が被害に遭った刑法犯の認知件数を見たものである。総数で見ると,平成元年は1万163件で,前年より633件(6.6%)増加している。罪名別では,窃盗の被害が8,805件(総数の86.6%)で最も多く,次いで,傷害の414件(同4.1%),詐欺の202件(同2.0%),暴行の121件(同1.2%)の順になっている。