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1 概 説 暴力団による対立抗争事件の発生回数は,昭和60年を頂点として3年連続して減少傾向を示していたが,平成元年は4年ぶりに増加に転じた。また,一般市民を巻き添えにした凶悪な銃器発砲事件は年々増加する傾向を示し,暴力団は,依然として市民生活に大きな不安を与え続けており,我が国全体の犯罪情勢を悪化させる要因となっている。
警察庁刑事局の資料によると,平成元年末現在における暴力団は,団体数が3,155団体,団員数が8万7,260人であり,そのうち,広域暴力団(2以上の都道府県にわたって組織を有する暴力団をいう。)に所属する暴力団は,団体数が2,835団体,団員数が7万419人である。また,広域暴力団のうち,特に悪質かつ大規模な広域暴力団で,警察庁が集中取締りの対象として指定している3団体に所属する暴力団は,団体数が1,459団体(暴力団全体の46.2%),団員数が3万7,669人(暴力団員全体の43.2%)であり,前年に比べ暴力団全体に占める構成比は,団体数で2.5ポイント,団員数で3.3ポイントそれぞれ上昇している。しかし,上記3団体を除く広域暴力向は,団体数が1,376団体(暴力団全体の43.6%),団員数が3万2,750人(暴力団員全体の37.5%)であり,前年に比べ構成比で,団体数が1.5ポイント,団員数が2.8ポイントそれぞれ低下している。したがって,暴力団の現状は,上記3団体による寡占化の傾向にあるといえる。 I-28表は,最近5年間における暴力団相互の対立抗争事件を見たものである。平成元年に発生した対立抗争事件は,発生件数が30件,発生回数が156回で,前年に比べ発生件数で2件減少し,発生回数で28回増加している。また,対立抗争事件のうち,銃器を使用した回数は142回(前年112回),死者は4人(同3人),負傷者は40人(同12人)で,前年に比べていずれも増加している。 最近5年間の暴力団関係者から押収したけん銃の種類別押収数は,I-29表のとおりである。平成元年のけん銃の押収数は1,003丁で,前年に比べて252丁(20.1%)減少しているが,押収けん銃のうち真正けん銃の占める割合に87.2%に及んでいる。元年の暴力団関係者による銃器使用回数(対立抗争による分を含む。)は268回で,前年に比べ19回増加しており,また,これによる死者は19人(前年28人),負傷者75人(同60人)で,死者は減少しているものの負傷者は増加している。特に,一般市民を巻き添えにした発砲事件は15件(前年12件)で,昭和59年以降増加傾向にある。 I-28表 暴力団対立抗争事件の発生状況(昭和60年〜平成元年) I-29表 暴力団関係者からのけん銃押収数(昭和60年〜平成元年) 暴力団の資金源としては,風俗営業,興行,金融業など一応合法といい得るものもあるが,主要なものは,依然として,覚せい剤の密売,恐喝,賭博,のみ行為等の非合法なものである。特に,覚せい剤については,ばくだいな利益が得られるため,組織ぐるみで密輸入や密売に当たっている暴力団が少なくない。なお,最近においては,暴力団組織の威勢を背景にした金銭消費貸借,家屋賃貸借,交通事故の示談等の金銭の取立てなどに絡む民事介入暴力事犯が増加の傾向にある。 |