前の項目 次の項目 目次 図表目次 年版選択 | |
|
1 概 説 警察庁の統計によれば,平成元年における我が国の警察による刑法犯(「刑法犯」の定義については,凡例参照)の認知件数は,前年より5万3,696件(2.4%)増加し,226万1,076件となっており,刑法犯から業務上過失致死傷及び重過失致死傷(以下「業過」という。)のうち道路上の交通事故に係るもの(以下「交通関係業過」という。)を除いた件数では,前年より3万1,958件(1.9%)増加して167万3,268件となっている。
また,平成元年における警察による刑法犯の検挙人員は,前年より5万4,590人(5.5%)減少し,93万4,194人(うち,少年は23万87人で,構成比は24.6%)である。交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員では,前年より8万5,216人(21.4%減少して,31万2,992人(うち,少年は16万5,053人で,構成比は52.7%)となっている。 戦後における刑法犯の認知件数及び検挙人員の推移を示したのが,I-1表及びI-1図である。これによると,交通関係業過(昭和40年以前は業過)を除く刑法犯の認知件数は,昭和23年に約160万件のピークに達した後,年次の経過とともに起伏を示しながら減少し,48年には約119万件と戦後最低を記録した。しかし,49年からはほぼ一貫して増加傾向を続け,60年には160万件を突破し,その後2年間は減少して160万件を下回ったものの,63年からは再び増加して160万件を超え,平成元年には戦後最高の167万3,268件となっている。近年における交通事故の多発に伴い,交通関係業過の認知件数は,昭和53年の44万件弱から増加傾向を続け,平成元年には59万件弱になっているが,この交通関係業過を含めた全刑法犯の認知件数は,昭和50年以降ほぼ一貫して増加を続け,平成元年には226万1,076件に達し戦後最高となっている。 I-1表 刑法犯の認知件数及び検挙人員(昭和21年〜平成元年) I-1図 刑法犯の認知件数及び検挙人員の推移(昭和21年〜平成元年) I-2表 刑法犯の主要罪名別認知・検挙件数及び検挙人員(平成元年) 次に,交通関係業過を除く刑法犯の発生率(人口10万人当たりの認知件数の比率をいう。)を見ると,戦後最低であった昭和48年の1,091から増加傾向を続け,60年には1,328となり,その後2年連続して低下したものの,63年からは再び増加に転じ,平成元年には前年より21ポイント増加して1,358となっている。平成元年における刑法犯の認知件数,検挙件数,検挙人員及び検挙率を主要罪名別に見ると,I-2表のとおりである。認知件数は,ほとんどの罪名において前年より減少しているが,窃盗,交通関係業過,器物損壊等では前年より増加している。また,元年における検挙率は,全刑法犯では60.2%(前年は70.1%),交通関係業過を除く刑法犯では46.2%(同59.8%)となっている。 I-2図 刑法犯認知件数の罪名別構成比(平成元年) I-3図 交通関係業過を除く刑法犯認知件数の罪名別構成比(平成元年) 平成元年における刑法犯及び交通関係業過を除く刑法犯の認知件数の罪名別構成比を示したのが,I-2図及びI-3図である。刑法犯の認知件数では,窃盗が65.6%,交通関係業過が26.0%を占め,この両者を合わせると91.6%にも達する。交通関係業過を除く刑法犯の認知件数では,窃盗が88.7%と圧倒的多数を占め,次いで詐欺の3.2%,横領の2.0%の順になっている。また,平成元年における刑法犯及び交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員の罪名別構成比を示したのが,I-4図及びI-5図である。刑法犯の検挙人員では,交通関係業過が66.5%と過半数を占め,認知件数の最も多い窃盗は20.9%となっている。これは交通関係業過の検挙率が極めて高率であるのに対して,窃盗のそれは近年低下を続け,元年においては41.7%にとどまっていることが影響しているものである。交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の罪名別構成比を見ると,最も高いのは窃盗の62.4%で,以下,横領の11.4%,傷害の8.0%,恐喝の3.0%の順になっている。 I-4図 刑法犯検挙人員の罪名別構成比(平成元年) I-5図 交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の罪名別構成比(平成元年) I-6図 刑法犯検挙人員の年齢層別構成比(平成元年) 次に,平成元年における交通関係業過を除く刑法犯検挙人員の年齢層別構成比を見ると,I-6図のとおりである。犯罪少年(ここでは,犯行時に20歳未満である者をいう。)の構成比は,前年を4.3ポイント上回り,52.9%となっている。その中で,年少少年の構成比は,少年検挙人員の50.4%と過半数を占めている。 |