前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 元年版 犯罪白書 第4編/第5章/第2節/2 

2 特別法犯の動向

 次に,昭和の道交違反を除く特別法犯の動向について,検察庁新規受理人員(23年以前は新規受理件数)によって見ると,6年の約8万6,000件(道交違反及び業過を除く新規受理件数総数の約21%)から増加して,戦前のピークは18年の約16万件(同約46%)となり,戦後は23年の約97万件(同69%),24年の約86万人(道交違反及び業過を除く新規受理人員総数の約59%)と高い数値を記録するが,30年代に急激に減少した二その後20万人を超,える年もあるが,おおむね十数万人で推移し,63年には約11万人(同約24%)となっている。ただ,戦前は,違警罪即決例により処分されたものの大部分は,特別法犯であり,11年ころまでは年間100万人(これらは検察,裁判の各統計には上げられていない。)を突破していたことに注目する必要があろう。
 罪名の内訳を見ると,昭和14年までは,警察犯処罰令違反,道路取締令違反など比較的軽微な特別法犯が相当部分を占め,15年以降は,国家総動員法違反等の経済統制法令違反が激増している。戦後は,20年代から30年代半ばにかけて食糧管理法等の経済統制法令違反が多発し,30年代半ばから40年代までは,まず売春防止法違反が増加し,次いで,銃砲刀剣類所持等取締法及び風俗営業等取締法の各違反の増加が目立ち,40年代後半から覚せい剤取締法違反等の薬物事犯が激増している。その他,道交違反は,戦前においても相当発生していたが,24年以降は急増して40年には約497万人(特別法犯全体の96.6%)に達しており,その後,交通反則通告制度の導入やその適用範囲の拡大により減少したが,それでも63年には約126万人(同91.9%)となっている(第2章第3節参照)。
 このように,特別法犯の動向には,その時々の社会情勢と国家の一社会秩序維持のための取締方針が端的に現れているものと思われる。