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 昭和37年版 犯罪白書 第三編/第四章/一 

第四章 少年に対する保護観察

一 少年院からの仮退院

 少年院に収容された者は,少年院から釈放し保護観察を付することが適当な時期になると,仮退院が許される。仮退院は,地方更生保護委員会(以下地方委員会とよぶ)の権限であるが,その許可にあたっては,少年院内における本人の成績や,本人の帰住予定先の環境,保護者の受入態勢などについて保護観察所の行なった調整の結果などが考慮され,また,主査委員が本人に直接面接した上で,その許否が決せられる。
 仮退院の許可を受けたときは,遵守事項を守ることを誓約し,また,すみやかに保護観察所に出頭しなければならないことになっているが,一般には保護者が少年院まで出迎えにゆき,本人とともに保護観察所に出頭するように配慮されているから,保護観察所への出頭率は比較的良好である。
 地方委員会が行なう仮退院の許可・不許可は,III-33表のとおり,少年院の長の申請のあったものの九八・九%が許可,一・一%が不許可(または棄却)であって(昭和三五年),その不許可率は,仮出獄の場合(約七%)と比較すると,著しく低率といえるのである。少年院を出院した者のうち,仮退院と退院の別をみると(退院の場合とは,仮退院が許可されなかった場合のほかに,少年院の長が仮退院の申請をしないままに,満齢または満期で退院する場合がある),III-34表のとおり,出院者の七八・三%が仮退院,一五・八%が退院となっている(昭和三五年)から,ほぼ八割弱が仮退院を許可されているといえる。しかし,少年院の種別によって,この仮退院の率は差異がある。昭和三五年における少年院の種別ごとの仮退院率をみると,III-35表のとおり,初等少年院は九三・九%で最も高く,これに次ぐものは,中学少年院の七九・六%,医療少年院の七五・六%であり,最も低いのは,特別少年院の七三・四%である。特別少年院は,非行性の進んだ少年を収容し,かつ,その家庭環境や保護条件等が良好でないものが少なくないので,仮退院を許される率が他の少年院に比して低いのであろう。

III-33表 少年院仮退院の許可・不許可の人員と率(昭和31〜35年)

III-34表 少年院出院者の仮退院・退院別人員と率(昭和31〜35年)

III-35表 少年院種類別出院者の仮退院・退院人員と率(昭和35年)

 仮退院を許されると,少年院から釈放されて保護観察に付されるが,その仮退院の期間中成績が良好であれば,仮退院を退院に切りかえられることもある。これに反して,仮退院の期間中に再犯を犯し家庭裁判所に送られてあらたな処分(少年院送致や保護観察処分)を受けると,家庭裁判所の決定によってもとの保護処分(少年院送致)が取り消され,また,仮退院の期間中に保護観察の遵守事項に違反すると,家庭裁判所の戻し収容の決定で再び少年院に収容されることがある。昭和三一年以降について,仮退院を許可された者がその仮退院の期間中に保護処分取消決定または戻し収容を受けた状況をみると,III-36表のとおり,昭和三五年には,戻し収容が四七人,家庭裁判所の取消決定が一,二六七人で,この両者の合計と仮退院許可人員総数に対する比率は,一六・一%である。仮出獄の取消率は,前述のように,四・四%であるが,これと仮退院中の取消・戻し収容の率とを比較すると,後者が前者の約四倍弱にあたり著しく高率といえる。仮退院中の取消・戻し収容が仮出獄取消に比して高率である理由の一つとして,仮出獄の期間は一般に短期のものが多く,また,その期間内に再犯を犯したり,遵守事項に違反したりしても,仮出獄取消の手続をとっている間に仮出獄の期間が満了となる場合があるのに反して,仮退院はその期間が比較的長いことがあげられるであろう。

III-36表 仮退院許可人員中の戻し収容・家庭裁判所取消人員および率(昭和31〜35年)