三 少年鑑別所の問題点 少年鑑別所の今後の問題点として,次の三点が考えられる。その一は,鑑別期間を延長すべきかどうかであり,その二は,少年鑑別所の拡充強化であり,その三は,少年鑑別所法の制定である。 現在少年法で定められている観護期間は二週間ないし四週間であるが,実際に収容される鑑別期間は,全国平均が約二一日である。また,東京,大阪のように収容少年の多い少年鑑別所では,平均一五-一六日となっている。このように短期間であるため,鑑別方法は,おのずと集団心理検査を中心としたものとならざるを得なくなり,試行過程法などを用いて種々の場面で心理検査の結果を吟味して鑑別の精度をあげることができない実情にある。さらに,このため,鑑別が少年の欠点にのみ目を向けるようになり勝ちとなり,相当期間の観察を通じて初めて確認できる少年の長所の発見が困難となり,したがって,これを鑑別結果にもりこむことができないうらみがある。これらの弊害をのぞき,適正な鑑別を行なうためには,鑑別期間の延長が考慮されなければならない。また,少年鑑別所において少年の悩みや不安をとりのぞき,将来行なわれる更生改善のための処遇の第一歩としてその処遇にカウンセリング等の技術を採りいれなければならないという見地に立てば,鑑別期間の延長は,また当然のことといえるであろう。 少年鑑別所は,少年の資質を科学的に調査し,どのような処遇を適当とするかを家庭裁判所が決定する際の資料を提供するところであるが,少年に対する処遇は,このような科学的調査をまつことなくして決定しえないともいえるのである。しかし,少年鑑別所は,創設以来まだ日が浅いために,人員,施設ともに十分なものとはいえず,とくに近年鑑別受理人員は増加の傾向にあり,昭和三五年には,六七,六五二人の多きに達しているが,これに対処して適正な鑑別を行なうに足りる人的物的の増強が行なわれていない。鑑別方法を改善して,精度の高い鑑別をするとともに,前述のような積極的な処遇をするためには,少年鑑別所の拡充強化が必要である。 欧米の少年鑑別所をみると,その機能を生かすために,各方面の専門家を擁するとともに,高度の技術を活用して精密な鑑別を行なっており,鑑別の期間も長く,かつ,施設も高度に整備されているものが多い。わが少年鑑別所の不備を是正し,本来の姿のものとするためには,右のような改善を行なわなければならないが,このためには,少年鑑別所法の制定が必要となろう。
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