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 昭和37年版 犯罪白書 第二編/第四章/三/3 

3 対象者の成績と保護観察の終了

 保護観察の対象者の行状は,前に述べたように,保護司が毎月成績報告書によって保護観察所に報告することになっているが,その際その月の総合成績を「良」「稍良」「普通」「不良」の四段階に分けて評定することになっている。この評定の基準は,「良」が,就学,交友,健康,環境等にほとんど問題が認められず,本人の気持や行動が安定しており,担当者に対する連絡状況もよく,遵守事項をよく守り,更生意欲が積極的で,その更生状態が一般の社会人と同等の水準に達していると認められるもの,「稍良」が,更生意欲にやや積極性を欠いているが,気持や行動はほぼ安定しており,担当者に対する連絡状況,就学,就業,交友,健康,環境等についても格別の問題が認められず,その更生状態が一般の社会人と同様の水準に近づいていると認められるもの,「普通」が,本人の気持や行動がやや不安定であり,更生の意欲が消極的で,担当者との連絡,就学,就業,交友,健康,環境等についてかなりの問題が認められ,指導監督上相当の注意を要すると認められるもの,「不良」が,就学,就業,交友,健康,環境等について多くの問題が認められ,本人の気持や行動が不安定であり,担当者に対する連絡が悪く,遵守事項を守らず,更生の意欲がきわめて乏しく,指導覧督上強力な措置を要すると認められるものである。
 法務省保護局が昭和三六年七月の成績報告書によって調査したところによると,II-39表のとおり,「良」の率の最も高いのは,仮出獄者の二八・〇%,最も低いのは,少年院仮退院者の一四・六%,また「不良」の率の最も高いのは,少年院仮退院者の一六・〇%,最も低いのは,仮出獄者の四・六%である。したがって,所在不明,成績不詳の分を除けば,仮出獄者は一般的に成績が良く,これに反して少年院仮退院者は,他に比して成績が悪いということになる。

II-39表 保護観察種類別対象者の成績区分別人員の率(昭和36年7月末現在)

 成績報告書において成績が良好であると判定されたものについては,適当な時期に保護観察を解いて全く自由な状態におく措置がとられることになり,また,「不良」と判定されたものについては,すみやかにその状況を調査し,その状況に応じた措置がとられることになる。成績が良好で保護観察をつづける必要がないと認められた場合の保護観察を終了させる処分としては,保護観察処分の少年に対しては保護観察の解除,少年院仮退院者に対しては,仮退院中の退院(仮退院中であってもこれを退院とする処分)がある。仮出獄者に対しては,不定期刑については不定期刑の終了の決定があるが,定期刑については,成績良好を理由に保護観察を終了せしめる途はない。なお,保護観察付執行猶予者については解除によって保護観察を打切る制度はないが,成績良好者に対しては,保護観察を仮に解除することができる建前になっている。
 成績不良であって,これ以上保護観察をつづけることが適当でないと認められたときは,保護観察処分の少年に対しては家庭裁判所への通告,少年院仮退院者に対しては本人を少年院への戻し収容,仮出獄者に対しては仮出獄の取消,保護観察付執行猶予者に対しては,刑の執行猶予の取消,婦人補導院仮退院者に対しては仮退院の取消を,それぞれすることができる。このような措置がとられると,これによって保護観察は終了する。なお,このような特別の措置がとられなかった場合でも,定められた保護観察期間の経過によって保護観察は終了する。
 まず,仮出獄者の保護観察終了時の状況をみると,II-40表のとおりである。その終了人員が昭和三一年以降漸減の傾向にあるのは,仮出獄自体の減少傾向に対応するものである。終了の事由別をみると,期間満了が約九五%,仮出獄の取消が四%強であって,この比率は,昭和三一年以降ほとんど変わっていない。この統計からみれば,その成績は比較的良好といわなければならないが,仮出獄の期間は一般的にいって短期間であり,たとえば,昭和三五年の終了人員についてみると,その期間が三月以下のものが六四・二%,三月をこえ六月以下のものが一八・五%,六月をこえるものが一七・三%であるから,たとえ,その期間内に再犯が犯され,または遵守事項違反の事実があり,仮出獄取消の手続をとったとしてもその手続をとっている間に期間が満了となる場合が少なくない。

II-40表 仮出獄者の保護観察終了時人員と終了事由別人員の率(昭和31〜35年)

 次に,保護観察付執行猶予者の保護観察終了時の状況をみると,II-41表のとおりである。その終了人員が昭和三一年以降著しい増加を示しているが,これは保護観察付刑の執行猶予の制度が全面的に実施されたのは昭和二九年七月一日からであるために,その当初においては終了人員が少なく,最近にいたり次第に増加をみたものである。また,その終了事由別比率をみると,昭和三一年には執行猶予の取消が八四・二%と異常なほど高いが,これは期間満了によるものの数が少ないために生じた例外の現象である。昭和三五年からはほぼ正常な状況にあるといえるが,それにしても執行猶予の取消が三六・八%というのは,高率といわなければならない。保護観察付執行猶予がこのような高い取消率を示しているのは,その理由がどこにあるか十分に検討を要するものがある。

II-41表 保護観察付執行猶予者の保護観察終了時人員と終了事由別人員の率(昭和31〜35年)