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犯罪者の更正のためには,矯正施設に収容して矯正教育を施すことの必要な場合も少なくないが,それよりも普通の社会生活を営なませつつ,これに適宜,指導監督,補導援護の手をさしのべて更生の途につかせる方がよいとおもわれる場合も少なくない。また,矯正施設で矯正教育を施したとしても,それだけでは更生を期待することは困難である。ひとたび社会に出ると,更生を妨げる因子が多く,かつ,本人が前に犯罪に陥ったその社会の中で,自力で更生を遂げることは,容易なことではないからである。そこで,本人を一般社会のなかにおき,これに通常の生活をさせつつ,指導監督,補導援護を与えて更生をはからせることが必要である。この方法が保護観察である。
保護観察の対象となるものは,次の五つである。すなわち, (1) 家庭裁判所で少年法の保護観察処分を受けた少年(以下保護観察処分の少年とよぶ) (2) 少年院からの仮退院を許された者(以下少年院仮退院者とよぶ) (3) 仮出獄者 (4) 保護観察付で刑の執行猶予を言い渡された者(以下保護観察付執行猶予者とよぶ) (5) 婦人補導院から仮退院を許された者(以下婦人補導院仮退院者とよぶ) の五種である。これらの対象者に対して保護観察をつかさどるのは,全国四九カ所の保護観察所である。 昭和三一年以降の保護観察対象者の人員(年末現在)は,II-31表に示すように,著しく増加し,昭和三五年末には九七,三四四人に達している。しかし,増加の主体となっているのは,右のうち保護観察処分の少年と保護観察付執行猶予者であって,仮出獄者はむしろ減少を示している。 II-31表 保護観察対象者の種類別人員(昭和31〜35年) 保護観察の対象者を犯罪の罪種別に分けてみると,昭和三二年以降では,窃盗,詐欺,横領,賍物等の財産犯が減少傾向を示しているのに対して,暴行,傷害,恐喝,強盗,強姦,殺人,脅迫の粗暴犯または人身犯が著しく増加している(II-32表参照)。財産犯が減少しているのは仮出獄者のそれが減少しているためである。しかし少年は,保護観察処分の少年であると,少年院仮退院者であるとを問わず,彼等による粗暴犯・人身犯および財産犯がともに漸増の傾向を示している。II-32表 保護観察対象者の罪種別新受人員(昭和32〜35年) しかし,保護観察事件の増加傾向には,地域差があって,全国一率ではない。すなわち,増加傾向の著しいのは大都市でその他の地域ではそれほどの増加をみせていない。いま,こころみに,東京,大阪,神戸,名古屋,横浜,福岡等大都市の保護観察所とその他の地域の保護観察所との新受人員を比較してみると,II-33表のとおり,東京等の大都市所在の保護観察所では昭和三一年以降増加を示し,昭和三五年には一二二(昭和三一年を一〇〇とする)という指数を示しているが,その他の地域では多少の増減はあるとしても,さしたる増加をみせず,昭和三五年には一〇一の指数を示しているにすぎない。II-33表 大都市と他地域の保護観察新受人員と指数(昭和31〜35年) |