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 昭和37年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/1 

1 仮出獄

 仮出獄事件の許可・不許可の決定の状況を昭和三一年以降についてみると,II-27表に示すように,まずその決定人員は,昭和三二年をピークとしてそれ以降は減少の傾向にあり,昭和三五年は三三,三五九人であるが,許可と不許可(棄却を含む)の比率は,わずかではあるが許可のそれが減少を示し,不許可が増加をみせている。このことは,仮出獄を許可するかどうかの判断がだんだんに厳正になってきたためではないかとおもわれる。刑務所における過剰拘禁が著しかった当時においては,過剰拘禁を緩和するために仮出獄が利用されていた面がなかったとはいえないが,最近は仮釈放がこのように利用されるという変則的な運用から脱却し,仮釈放制度の運用が本来の姿をとりもどしつつあるものといえよう。

II-27表 仮出獄事件の許可・不許可人員と率(昭和31年〜35年)

 このような事情は,仮出獄を許された者の仮釈放期間についても反映している。すなわち,昭和三一年以降の仮出獄者について,どの程度に刑が執行された後に仮出獄が許されているかをみると,II-28表にみるように,初犯者(定期刑)については,刑期の六割以内の執行で仮出獄が許可された者は,昭和三一年には一一・八%であったものが,昭和三四年には七%に減少し(なお,昭和三五年についてはその資料が公にされていない),これに反して,刑期の八割をこえる執行で許可された者は,昭和三一年には四二・一%であったものが,昭和三四年には五〇%に増加している。このことは,累犯者(定期刑)の場合にも同様であって,刑期の六割以内の執行で仮出獄を許された者の比率が低下し,刑期の八割をこえる執行で仮出獄を許された者は,昭和三一年の七七・六%から昭和三四年の八五・六%に増加しているのである。

II-28表 仮出獄者の刑執行済期間別人員と率(昭和31〜34年)

 仮出獄の許否が妥当であったかどうかを論ずるには,仮出獄を許された者のその後の成行を見ただけでは不充分であるが,しかし最も多く問題にされるのは仮出獄者の仮出獄期間中の再犯率である。もともと仮出獄は,少なくとも期間中再犯のおそれがない場合でなければ,これを許すべきでないとされているのであるから,期間中の再犯率をもって仮出獄許否の当否の判定の資料とすることは,理由があるといえる。しかし,毎年の仮出獄者の全員について仮出獄中の再犯の有無を調査することはきわめて困難であるので,さしあたり毎年の仮出獄の許可人員とその年の仮出獄取消人員とを比較する方法が従来行なわれている。この方法は,仮出獄の許否が妥当に行なわれているかどうかを見るためには適当とはいえないが,仮出獄制度の運用状況のある傾向を知る一応の目安にはなるであろう。これをみると,II-29表のとおり,取消率(仮出獄許可人員で仮出獄取消人員を除した率)は,ほぼ四-五%で安定しており,低率ということができる。しかし,取消率が低いというだけで仮出獄の成績を論ずることはできない。

II-29表 仮出獄許可人員・取消人員とその率(昭和31年〜35年)

 年度はややさかのぼるが,昭和二八年に宇都宮,静岡,甲府の三刑務所から釈放された初入者二,二四四人について出所後五年間の成行を法務総合研究所で調査したところによると,その八〇%にあたる一,九三三人が仮出獄を許可されているが,このうち六三二人(仮出獄者の約三二%)がその後刑務所に再入している。その再入の原因となった犯罪の日が仮出獄の期間中であるものは,仮出獄者の一四・六%に及んでいるが,この者に対してつねに仮出獄の取消がなされているわけではない。最近は,仮出獄期間中に犯罪を犯した場合はつとめて仮出獄の取消が行なわれる傾向にあるが,それでも,その取消手続がとられないうちに仮出獄期間の満了となるものも相当数あることと推測されるので,取消率がそのまま再犯率を示すものということはできない。いずれにしても仮出獄の許否の判断においては,さらに一層の検討を要するものがあるといえる。