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再入受刑者を初入受刑者と比較してみた場合,どのような相違点があるであろうか。もっとも,この相違は,累犯的傾向を有するかどうかの相違を必ずしも示すものとはいえない。なぜなら,再入受刑者のなかには,今回限りで再び犯罪を犯さないかも知れないものも含んでおり,また,初入受刑者のなかには,将来犯罪をくり返すおそれのある者を含んでいるわらである。しかし,犯罪対策の面からいえば,初入者であるか再入者であるかは重要な相違をもつから,以下行刑統計年報を中心として,初入受刑者と再入受刑者との相違点をながめてみることにする。
第一に,すでに述べたように,新受刑者のなかに含まれる再入受刑者の比率は,男子が女子よりも高いということである(I-86表参照。昭和三一-三五年の平均では,男子五八・二%,女子三七・五%)。この傾向は,アメリカでも同様であるといわれている(たとえば,ウィスコンシン州では,一九五六-七年の割合が男子五〇・九%,女子三七・三%)。 第二は,再入受刑者が初入受刑者より年齢的に高いということである。昭和三三-三五年の初入受刑者の年齢の中央値は,二四・九歳であるが,再入受刑者のそれは,三一・五歳である。これを男女別にみると,初入受刑者と再入受刑者の年齢のひらきは,男子より女子の方がせまい。すなわち,男子のひらきは六・六歳であるのに対して,女子は三・五歳である。また,女子は男子より年齢が高く,その中央値をとると,初入受刑者では六・六歳,再入受刑者では二・七歳だけ男子より高い。 第三に,再入受刑者は年齢の高い者ほど再入する機会が高いということである。昭和三三年から昭和三五年までの新受刑者総数について,各年齢層別に再入者の占める割合をみると,二〇-二四歳のグループでは三〇・二%にすぎないが,二五-二九歳のグループでは六六%,五〇歳以上のグループでは七二・四%という高率を示している(I-95表参照)。二四歳以下のグループの比率が低いことは,恐らく少年法との関連を考慮に入れなければならないであろう。すなわち,受刑者の大部分は,初入,再入を問わず過去においてすでに非行や犯罪によってなんらかの処分を受けている。昭和三五年の新受刑者のうち,刑事処分や保護処分を受けた経歴をもつものが八〇%に及んでかる点からみても,初入受刑者のなかには,少年院送致,保護観察などの保護処分または刑の執行猶予等の刑事処分を受けた者が少なくないと想像される(I-96表参照)。 I-95表 新受刑者中の再入受刑者の年齢層別人員の比率等(昭和33〜35年累計) I-96表 新受刑者の刑事処分歴・保護処分歴別人員(昭和35年) 第四に,再入受刑者によって占められる率の高い罪名としては,刑法犯では住居侵入,賍物関係,窃盗,詐欺,恐喝,傷害などがあるが,これに反して初入受刑者によって占められる率の高い罪名としては(再入受刑者の率の低いものがこれにあたる),贈収賄,嬰児殺,猥せつ,強姦,放火,殺人,強盗などがある(I-97表参照)。I-97表 新受刑者中の再入受刑者罪名別人員と率(昭和33〜35年累計) 第五に,初入受刑者と再入受刑者との刑期をそれぞれの構成比率から比較してみると,初入受刑者は再入受刑者より刑期の短いものが多い。その中央値を求めると,初入受刑者の〇・八七年に対して,再入受刑者は一・〇一年となり,初入受刑者の方が一月半ばかり短いことになる。第六に,職業の有無について初入受刑者と再入受刑者を比較すると,昭和三五年の新受刑者総数のうち再入受刑者はその五八・五%であるが,この再入受刑者のうち有職者はその五四・九%,無職者は四五・一%であるのに対し,初入受刑者はその六六・一%が有職者,三三・九%が無職者である。すなわち,有職の構成比率は初入受刑者の方が高い。なお,再入受刑者は,たとえ有職者であってもその業種は単純労働者が多い。 第七に,精神診断面からみると,再入受刑者には正常者が少なく,精神障害者が多いことである。このことは,矯正施設で行なっている分類の結果からばかりでなく,多くの調査研究からも明らかにされているところである。法務省矯正局の調査によると,累犯傾向の著しい者を収容するB級刑務所と,初入受刑者を収容するA級刑務所との比較を行なった結果,B級刑務所では,正常者が少なく(A級の六二・二%に対しB級は二八・一%),準正常の者が多く(A級の三〇・七%に対してB級は五六・八%),また,精神障害者が多い(A級の七・一%に対してB級は一五・一%)と報告されている(昭和三六年一二月二五日現在の調査)。 |