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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第五章/二/3 

3 通常第一審有罪人員からみた再犯者,累犯者

 略式命令手続または即決裁判手続を除く裁判手続,換言すると,通常の裁判手続によって,審理を受け有罪の判決を受けたものを通常第一審有罪人員とよんでいるが,この通常第一審有罪人員のうちで前科者の占める割合を刑法犯についてみると,I-84表のとおりである。すなわち,終戦直前直後の混乱期は統計がないため明らかでないが,この時期を除けば,昭和一〇年以降昭和二四年まではおおむね三五%から三八%の間を上下していたのが前科者の比率である。しかるに,この比率は,昭和二五年に四四・二%という高率を示して以来,有罪人員の実数では減少傾向をみせているにもかかわらず,逐年上昇を示し,昭和二九年には五〇・四%と有罪人員の半数をこえるに至り,さらにその後にゆるやかな上昇カーブを示して,昭和三五年には五六・六%と戦前戦後を通じて最高の率を示すに至っている。

I-84表 刑法犯通常第一審有罪人員中の初犯者・前科者別の人員と率(昭和10〜35年)

 以上は罰金以上の刑に処せられ,刑法第三四条の二の期間(禁錮以上の刑は一〇年,罰金は五年)を経過せず,刑の言渡の効力が消滅していない者についてみたわけであるが,次に刑法でいう累犯者,すなわち,懲役に処せられた者でその刑の執行を終わり,または刑の免除を得た後,五年以内にさらに犯罪を犯し,有期懲役に処せられた者等刑法第五六条所定の者とそうでない者とに分けて,刑法犯の通常第一審有罪人員をみると,I-12図に示すように,昭和二八年以降累犯者の数は,二万二千人ないし二万七千人台を上下してほぼ一定した水準を保ち,また有罪人員に対する比率も三〇%ないし二六%の間を上下している。昭和三五年の累犯者の数は,二一,九四六人で,有罪人員に対する比率は,二六・二%である。

I-12図 刑法犯通常第一審有罪人員中の累犯者数およびその率(昭和24〜35年)