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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第五章/一 

第五章 累犯者,前科者等の犯罪

一 序説

 累犯の増加は,一九世紀後半の欧州諸国において顕著となり,これが動機となって,実証科学としての刑事学が成立するに至ったわけであるが,現在でも,累犯とくに常習犯の対策は,刑事政策における重要な問題の一つであることに変わりはない。
 一九五五年九月にロンドンで開催された第三回国際犯罪学会議においても,累犯者の問題がとりあげられており,また,昭和三六年一二月に発表されたわが国の「改正刑法準備草案」でも,常習累犯に対して不定期刑を採用し,この問題に関する刑事政策的解決への前進をみせようとしている。しかし,わが国では,累犯者とくにそのうちの常習的傾向の強い者の犯罪が多く,重要な犯罪についてもそれが少なくない。また,わが国の受刑者は,その半数以上が累犯によって占められており,これらの者に対する刑の量定,行刑,仮釈放,釈放後の対策などが適切に行なわれているかどうかが重要な課題となっている。もっとも,累犯者の犯罪行動に対する固執傾向は,従来の刑罰的思潮によっては到底その矯正を期待し得ないという見解も有力である,そして,このことは,イギリスにおける予防拘禁制度,西ドイツ,フランスにおける保安処分制度の採用からも明らかであるとされいる。
 以下,わが国の累(再)犯現象を統計面からながめ,累(再)犯者の犯罪傾向を明らかにすることとする。