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 昭和63年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/1 

第2節 暴力団犯罪

1 概  説

 暴力追放の幅広い国民世論と厳しい取締りにもかかわらず,暴力団は,依然として根強くその勢力を維持し,市民生活に大きな不安を与え続けているほか,我が国の犯罪情勢全体を悪化させる要因となっている。
 昭和62年末現在における暴力団の状況は,警察庁刑事局の資料によると,団体数で3,201団体,構成員数で8万6,287人とされており,そのうち,いわゆる広域暴力団(2以上の都道府県にわたって組織を有する暴力団をいう。)は,団体数2,872団体,構成員数7万1,056人で,さらに,特に大規模な広域暴力団組織(広域暴力団のうち,構成員数の多い上位3組織)に属する暴力団は,団体数1,294団体,構成員数3万1,107人となっている。広域暴力団及び特に大規模な広域暴力団組織に属する暴力団の全体に占める割合は,団体数で,それぞれ89.7%(前年88.1%),40.4%(同36.8%),構成員数で,それぞれ82.3%(同82.3%),36.1%(同34.8%)であり,前年に比べると,広域暴力団の構成員の割合は変わらないものの,その他の比率はいずれも上昇しており,現在の暴力団は,広域暴力団や特に大規模な広域暴力団組織による顕著な寡占化の状況が一層進んでいると言えよう。
 このような情勢下にあって,暴力団の連合化,系列化等の勢力拡大をめぐる組織間の対立抗争事件は,依然として,各地に発生し,地域社会に大きな不安をもたらしている。

I-28表 暴力団対立抗争事件の発生状況

 I-28表は,最近5年間における暴力団相互の対立抗争事件を見たものである。昭和62年に発生した対立抗争事件は,27件187回で,前年に比べ事件数で4件増加し,発生回数で31回減少している。また,対立抗争事件のうち,銃器を使用した回数は164回(前年177回),死者は18人(同18人),負傷者は35人(同67人)である。なお,63年に入り,対立抗争に絡み,住宅街で自動小銃等を乱射し,爆弾を爆発させるなど凶悪化の様相が見られる。
 最近5年間の暴力団関係者から押収したけん銃の種類別押収数は,I-29表のとおりである。昭和62年のけん銃の押収数は1,540丁で,前年に比べて11丁(0.7%)減少しているが,押収けん銃のうち真正けん銃の占める割合は84.4%に及んでいる。62年の暴力団関係者による銃器使用回数(対立抗争による分を含む。)は286回で,前年に比べ31回減少しているが,これによる死者は39人(前年59人),負傷者73人(同106人)で,いずれも前年より減少しているものの,依然として高い数値を示している。
 暴力団の資金源としては,風俗営業等,興業,金融業,土木建築など一応合法的事業と言い得るものもあるが,主要なものは,依然として,覚せい剤の密売,恐喝,賭博,のみ行為等の非合法なものと言ってよい。特に,覚せい剤については,ばくだいな利益が得られるため,組織ぐるみで密輸入や密売に当たっている暴力団が少なくない。なお,最近においては,暴力団組織の威嚇力を背景にした金銭消費貸借,家屋賃貸借,交通事故の示談等の金銭の取立てなどに絡む民事介入暴力事犯が増加の傾向にある。

I-29表 暴力団関係者からのけん銃押収数