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 昭和62年版 犯罪白書 第4編/第3章/第4節/1 

1 保護司の処遇活動等の実情

 保護司の使命は,「社会奉仕の精神をもって,犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに,犯罪の予防のため世論の啓発に努め,もって地域社会の浄化をはかり,個人及び公共の福祉に寄与すること」(保護司法1条)とされているが,その職務内容は,具体的には,保護観察対象者の指導監督及び補導援護のほか,刑務所,少年院等に収容されている者の環境調整,地域社会の犯罪予防活動など広範囲にわたっている。保護司の数は,昭和62年1月1日現在,全国で4万8,345人であり,その任期は2年であるが,再任を妨げないこととされているため,同日現在の経験年数別構成比は,2年未満のいわゆる新任保護司が12.7%,2年以上10年未満の者が41.7%,10年以上20年未満の者が28.6%,20年以上の者が17.0%となっており,在職10年以上の経験を有するベテランの保護司は45.6%と約半数を占めている。ちなみに,61年中において保護司1人当たりが担当した対象者数は,地域差はあるものの,全国の平均で,保護観察対象者(交通短期保護観察少年を除く。)2.9人,環境調整対象者1.8人の合計4.7人となっている。
 保護司の担当する職務の中でも,保護観察対象者の指導監督及び補導援護は,特に重要である。保護司は,専従の国家公務員である保護観察官と協働して,地域社会の住民であることと民間人でもあることの特質を生かし,これら保護観察対象者の処遇に当たっており,その状況の詳細は,第2編第4章第2節2(1)において前述したところであるが,具体的な処遇活動の実際は,懇切にして誠意ある態度をもって対象者やその家族らに接し,本人の内面的な心情等をよく理解した上で,相互の信頼関係を深めながら,本人の心身の状況,就業状況,交友関係,家庭の状況等の個別的事情を十分に考慮の上,その者に最も適した方法をもって本人の自覚を促し,遵守事項を守るよう指導監督するほか,必要に応じて,雇主等地域社会の関係者の協力の下に,就職の援助や家庭環境等を調整するなどの補導援護を行い,本人自らが更生に努めるよう助言,指導,援助を行っており,これら保護司の活動は,犯罪者に対する社会内処遇の重要な部分を担っていると言える。
 それでは,このような保護司が保護観察官と協働して行っている保護観察は,どのような効果を挙げているのであろうか。保護観察対象者は,これを[1]保護観察処分少年,[2]少年院仮退院者,[3]仮出獄者,[4]保護観察付執行猶予者,[5]婦人補導院仮退院者の5種類に分けることができるが,そのうち,[5]については該当者がいない実情にあるので,昭和61年中に保護観察を終了した者につき,[1]から[4]までの種類ごとに,終了時の保護観察の成績が良好(解除,退院,不定期刑終了,良好停止中又は仮解除中の期間満了,恩赦を含む。)であった者と,不良(保護処分の取消し,戻し収容,仮出獄の取消し,執行猶予の取消し,所在不明又は身柄拘束中の期間満了を含む。)であった者との割合を対比したのがIV-41表である。これによると,成績良好者が最も多い種類は,保護観察処分少年(保護司が担当しない交通短期保護観察少年を除く。)で,全体の73.9%が成績良好のうちに保護観察を終了しており,次いで,保護観察付執行猶予者(42.5%),少年院仮退院者(36.4%),仮出獄者(30.0%)の順となっており,逆に,成績不良者が最も多いのは,保護観察付執行猶予者(39.3%)で,以下,少年院仮退院者(36.3%),保護観察処分少年(16.4%),仮出獄者(9.6%)の順となっている。保護観察付執行猶予者の場合は,成績良好者と同不良者の割合がほぼ同じである。

IV-41表 保護観察終了者の成績(良好・不良)状況(昭和61年)