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 昭和62年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節 

第3章 司法関係機関の活動に対する信頼と期待

第1節 捜  査

 犯罪が発生した場合,我が国においては,司法警察機関が第1次的に捜査の責務を負うこととされているが,昭和61年においては,全国の検察庁における刑法犯新規受理人員(交通関係業過を除く。)の97.9%が警察によって検挙されており,警察は国民にとって最も身近な捜査機関であると言える。そして,警察が,これらの犯罪を認知した端緒を見ると,被害者又は被害関係者からの届出が80.5%を占め,警察活動による認知が17.1%,その他警備会社や第三者からの届出などが2.3%となっており(警察庁の統計による。),このことは,犯罪の認知自体を含め,犯罪の捜査には,国民の信頼と協力が不可欠であることを示していると言えよう。
 ところで,我が国は,諸外国に比べ犯罪発生率が低い上に,犯罪の検挙率は高く,国の治安状態はおおむね良好に保たれているが(第1編第1章第3節参照),その原因の一つとして,我が国の犯罪捜査機関が優秀であることはもとより,国民の信頼も厚いことから,犯罪の捜査や検挙に多くの国民の協力を得やすいことを挙げても差し支えないであろう。しかしながら,近時,我が国においても,軽微な事案においては,モの被害者が必ずしも当該被害を捜査機関に届けるとは限らなくなってきている状況も見受けられ,他方,各国の刑事政策の分野では,犯罪の暗数問題が取り上げられるようになってきている。そこで,本節においては,前記「総理府世論調査」,「受刑者調査」及び「受刑者の家族調査」を基に,まず,国民の被害経験の有無,届出の有無及び届けなかった理由についての調査結果を検討し,次いで,これとの関連において国民が捜査機関に対してどのような評価をしているかについて見てみることとする。