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 昭和62年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/2 

2 収賄事犯

 公務員犯罪の中でも,収賄事犯は,公務の公正に対する一般国民の信用を損ない,遵法意識の低下を招くなど,その及ぼす影響は計り知れないが,この種事犯は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられることから,当事者だけで隠密裏に行われることが多く,特定の被害者が存在しないことなども加わって,極めて潜在性が強く,検挙が困難である。
 収賄罪を犯して検挙された公務員の最近3年間における検察庁の受理人員の推移については,既にI-33表に掲記しているので,ここでは,どのような職務に従事している公務員が収賄罪により検挙されているかを見てみることとする。収賄罪は,上記のとおり,検挙が困難であり,相当の暗数があると考えられるので,単年度の統計でその傾向を推し測ることは適当でない。そこで,警察庁の資料により,最近10年間に収賄罪で検挙された公務員(いわゆる「みなす公務員」を含む。)全員につき,これを昭和52年から56年までの5年間(以下「前期」という。)と,57年から61年までの5年間(以下「後期」という。)に分け,それぞれ当該公務員の種類別に比較したのが,I-35表である。これによれば,検挙人員総数は,前期に比べて後期が113人(10.5%)減の962人となっており,公務員の種類別で見ると,前期後期を通じて地方公務員が最も多く,前期では総数の59.7%,後期では減少しているものの同じく53.8%を占め,次いで,地方公共団体の各種議員,国家公務員の順となっている。なお,地方公務員の中では,土木・建築関係の職員が特に多く,前期が300人,後期が197人となっている。
 昭和61年中に警察が検挙した事件の賄賂総額は1億9,248万円(前年より4,874万円・20.2%減),収賄者1人当たりの賄賂額は97万円(前年より37万円・27.6%減)となっている(警察庁刑事局の資料による。)。

I-35表 収賄公務員の種類別検挙人員(昭和52年〜56年,57年〜61年)

 I-36表は,昭和56年から60年までの5年間における第一審裁判所の科刑状況を見たものである。60年中に懲役刑に処された者は116人で,そのうち懲役1年以上の刑に処された者は71.6%(83人)で,この比率は過去5年間で最も高くなっている。また,執行猶予率は60年は92.2%で,前年より3.0ポイント上昇している。60年の実刑人員は9人で,その内訳は,懲役3年10月に処された者が1人,刑期2年以上3年未満の間で有期懲役刑を言い渡された者が4人,刑期1年以上2年未満の間で有期懲役刑を言い渡された者が4人となっている。

I-36表 収賄事件の第一審科刑状況(昭和56年〜60年)