刑法犯の主要なものについて，財産犯，凶悪犯，粗暴犯，性犯罪，過失犯及びその他の刑法犯に分けて，最近5年間の動向及び昭和61年における特徴を概観する。
(1)　財産犯
　最近5年間における財産犯の認知件数及び検挙人員は，I-3表のとおりである。
　財産犯の中でその大部分を占めている窃盗の認知件数の推移は，I-7図のとおりであり，昭和60年には戦後最高の138万1,237件を記録したが，61年には6,141件減の137万5,096件となっている。最近5年間における窃盗の主要手口別認知件数はI-4表のとおりで，自転車盗及び車上ねらいがほぼ一貫して増加しているが，前年まで増加を続けていたオートバイ盗は61年には若干の減少を見た。
　なお，最近におけるキャッシュカード，クレジットカード等の一般化に伴い，これを利用したいわゆるカード犯罪の増加が注目されてきたが，最近5年間におけるカード犯罪の認知件数及び検挙件数の推移はI-8図のとおりであり，昭和61年においては，認知件数，検挙件数とも前年より減少し，増加傾向に一応の歯止めがかかったように見受けられる。61年の検挙件数1万1,714件のうち1万772件(92.0%)は，店員等にカードを提示するなどの方法で金品をだまし取った詐欺事犯であり，885件(7.5%)は，現金自動支払機や自動金銭出納機等を操作して現金を引き出した窃盗事犯であった。

I-3表　財産犯の認知件数及び検挙人員(昭和57年〜61年)

Iー7図　窃盗の認知件数の推移(昭和21年〜61年)

I-4表　窃盗の主要手口別認知件数(昭和57年〜61年)

I-8図　カード犯罪の推移(昭和57年〜61年)

(2)　凶悪犯
　最近5年間の凶悪犯の認知件数及び検挙人員は，I-5表のとおりである。認知件数で見ると，昭和61年には殺人が若干減少したものの，強盗は134件増加しており，そのうち，強盗致傷の増加が目立っている。
　I-6表は，最近5年間の金融機関強盗の認知件数の推移を見たものである。昭和51年には21件にすぎなかった金融機関強盗は，その後毎年著しい増加傾向を示し，58年には216件に達したが，60年以降急激に減少し，61年には64件にとどまっている。

I-5表　凶悪犯の認知件数及び検挙人員(昭和57年〜61年)

I-6表　強盗及び金融機関強盗の認知件数(昭和57年〜61年)

(3)　粗暴犯
　最近5年間における粗暴犯の認知件数及び検挙人員は，I-7表のとおりである。傷害，暴行及び脅迫は，全体として見ると減少傾向にあるが，恐喝のみは一貫して増加傾向にあることが注目される。なお，昭和61年における特徴としては，食品製造販売会社等の企業を対象とした恐喝事件の増加が挙げられる。

I-7表　粗暴犯の認知件数及び検挙人員(昭和57年〜61年)

(4)　性犯罪
　最近5年間における性犯罪の認知件数及び検挙人員は，I-8表のとおりである。強姦は，昭和57年以降減少傾向が続き，同年を100とした指数で見ると，61年は，認知件数では73，検挙人員では65となっている。また，その他の罪名においても，61年は，認知件数及び検挙人員とも大幅な減少となっている。

I-8表　性犯罪の認知件数及び検挙人員(昭和57年〜61年)

(5)　過失犯
　最近5年間における過失犯の認知件数及び検挙人員は，I-9表のとおりである。昭和61年の交通関係業過は，前年より，認知件数で5.7%，検挙人員で5.6%それぞれ増加している。交通関係業過以外の業過及び過失致死傷は一貫して減少しており，失火も61年には前年より，認知件数で18.9%，検挙人員で15.0%それぞれ減少している。
(6)　その他の刑法犯
　その他の刑法犯として，放火，略取・誘拐，文書偽造・有価証券偽造及び賭博・富くじの各罪を取り上げ，最近5年間における認知件数及び検挙人員を見たのがI-10表である。放火の認知件数は，昭和57年に戦後最高を記録した後，全般的に減少の傾向をたどっており，同年を100とすれば，61年は78となっている。文書偽造・有価証券偽造の認知件数は前年より減少しているものの，略取・誘拐は前年より若干増加し，賭博・富くじは大幅に増加している。

I-9表　過失犯の認知件数及び検挙人員(昭和57年〜61年)