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 昭和61年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/2 

2 財産上の被害

 IV-11表は,財産上の被害について,被害総額,現金被害額,国民1人当たりの被害額及び被害総額に占める現金被害額の比率の推移を示したものであり,IV-8図は,これらのうち被害総額及び現金被害額の推移を図示したものである。
 まず,被害総額について見ると,昭和41年以降の全体的な推移においては増加傾向にあり,41年の600億7,100万円から59年の1,783億3,300万円へと3.0倍の伸びを示している。この被害額を国民1人当たりに換算すると,41年の607円から59年の1,483円へと2.4倍になっている。しかし,この期間における消費者物価指数は3.3倍に上昇しており,財産被害額の増加も,その実質的価値においては相対的に低下しているともいい得よう。

IV-8図 財産犯等による財産被害額の推移

 次いで,現金について見ると,被害総額の場合と同じように,全体的な推移においては増加傾向にあり,昭和41年の176億9,600万円が59年には676億9,000万円へと3.8倍になっている。また,被害総額の中に占める現金被害額の比率は,全体的に上昇する傾向にあり,41年が29.5%であったのに対し,59年は38.0%となっている。

IV-12表 主要罪名別の財産被害額の推移

 IV-12表は,財産上の被害について,罪名別に被害の年間合計額,主要5罪名(強盗,恐喝,窃盗,詐欺,横領をいう。)による財産被害総額に占める各罪名別被害額の構成比及び被害認知事件1件当たりの被害額の推移を示したものである。
 まず,被害の年間合計額について見ると,いずれの罪名でも増加傾向にあるが,増加率では強盗が最も高く,昭和41年の2億1,800万円から59年の21億6,200万円へと9.9倍にも達している。次いで増加率が高いのは詐欺であって,41年の162億8,700万円から59年の597億1,700万円へと3.7倍の上昇を示している。罪名別の構成比については,いずれの年次においても窃盗が最も高く,次いで詐欺,横領の順となっている。
 被害認知事件1件当たりの被害額を見ると,増加率が最も高いのは強盗で,昭和41年の6万1,138円から59年の98万8,053円へと16.2倍の上昇を示している。以下,41年から59年に向けて増加率の高いものを順に挙げると,恐喝の5.6倍,詐欺の3.6倍,窃盗の2.0倍となっている。
 IV-13表は,財産上の被害のうち主要な品目について,被害認知件数の推移を見たものである。なお,同表においては,一つの被害認知事件について現金以外に2品目以上の被害品がある場合には,2品目を限度として,それぞれの品目に計上している。
 昭和41年に比べて59年の被害認知件数が増加している品目について見ると,車両が19万3,286件から52万1,794件へと2.7倍,現金が37万450件から47万7,661件へと1.3倍,有価証券等が1万5,494件から1万6,340件へと1.1倍,それぞれ上昇している。これらのうち最も増加している車両の内訳は,オートバイが2万8,353件から18万5,253件へと6.5倍,自転車が12万9,299件から29万9,766件へと2.3倍などとなっている。
 次いで,被害認知件数が減少している品目について見ると,最も減少しているのが時計であり,4万7,721件から1万7,268件へと63.8%(3万453件)の減少を示し,以下,写真機・撮影機の47.2%,貴金属・宝石の28.4%,家庭用電気製品の16.1%の減少の順となっている。

IV-13表 主要品目別財産被害の認知件数の推移