昭和60年において，警察が検挙した刑法犯(交通関係業過を除く。)の人員は43万2,250人であるが，このうち高齢者は1万9,656人で，検挙人員の中に占める高齢者の比率(高齢者比)は，4.5%となっている。これは，高齢者比としては前項で述べた人口構成の場合の14.7%に比べると，まだ低いとはいえるものの，10年前の9,832人，2.7%に比べると，高齢者数で2.0倍，高齢者比で1.8ポイント増となっており，高齢者数の伸び率としては，人口構成の場合の1.4倍を上回っている。なお，5年前の1万2,376人，3.2%に比べると，高齢者数で1.6倍，高齢者比では1.3ポイント増である。
　また，高齢犯罪者の人口比(高齢者人口10万人に対する検挙人員の比率)も上昇しており，10年前の74.8が，昭和60年では110.5となっている。
　こうした増加傾向にある高齢者の刑法犯(交通関係業過を除く。)検挙人員について，昭和60年における場合を罪名別に示したものが，I-57表である。
　まず，構成比では，窃盗(74.4%)が最も高く，以下，横領(12.8%)，詐欺(3.9%)などの順となっている。これを男女別に見ると，窃盗が男女共に最も高いが，男子では67.4%，女子では90.4%であり，女子が男子に比べ極めて高くなっている。なお，横領，詐欺は，共に男子の方が高くなっている。
　次いで，検挙人員の中に占める高齢者比では，横領(6.0%)が最も高く，以下，窃盗(5.2%)，詐欺(5.1%)，殺人(4.5%)などの順となっている。これを男女別に見ると，男子では，横領(6.1%)が最も高く，以下，詐欺(5.0%)，殺人(4.7%)，放火(4.6%)などの順であるのに対し，女子では，窃盗(8.2%)が最も高く，以下，横領(5.3%)，詐欺(5.2%)などの順となっている。
　なお，窃盗について手口別に見ると，万引きや自転車盗が圧倒的に多く，万引きは，構成比で39.7%，高齢者比で8.5%，自転車盗は，構成比で21.6%，高齢者比で6.2%となっている。これを男女別に見ると，構成比，高齢者比共に，万引きでは女子が高く，自転車盗では男子が高くなっている。

I-57表　刑法犯検挙人員の罪名別高齢者数