I-58表は,各刑事処遇段階における高齢者数及び処遇対象人員の中に占める高齢者の比率(高齢者比)を,男女別に示したものである。
I-58表 各刑事処遇段階における高齢者数
昭和60年において,検察庁が終局処理した刑法犯(交通関係業過を除く。)のうち起訴及び起訴猶予とした人員(法人並びに男女別不詳及び年齢不詳を除く。)は16万5,918人であるが,このうち高齢者数は4,898人で,高齢者比は3.0%となっている。これは,高齢者比としては前項で述べた警察での検挙段階における4.5%に比べると低いものの,5年前に比べると,高齢者数で6.6%増,高齢者比で0.6ポイント増となっている。なお,60年の高齢者比を男女別に見ると,男子では2.7%,女子では5.4%であり,女子の方が高くなっている。
次に,起訴猶予率を見ると,高齢者を含めた全体では33.3%であるのに対し,高齢者のみでは49.3%であり,高齢者の場合の起訴猶予率が高くなっている。これを男女別に見ると,男子では,全体の起訴猶予率が29.0%であるのに対し高齢者のそれは43.2%であり,女子では,全体が71.0%であるのに対し高齢者の場合は76.2%となっている。
昭和59年において,地方裁判所及び簡易裁判所が公判の裁判手続により処理した刑法犯有罪人員は5万660人であるが,このうち高齢者数は1,053人で,高齢者比は2.1%となっている。これを5年前に比べると,高齢者数で24.0%増,高齢者比で0.4ポイント増となっている。なお,59年の高齢者比を男女別に見ると,男子では2.0%,女子では3.1%であり,女子の方が高くなっている。
昭和60年における新受刑者数は3万1,656人であるが,このうち高齢者数は713人で,高齢者比は2.3%となっている。高齢者比としては裁判段階における2.1%よりも高くなっていることが注目され,また,5年前に比べると,高齢者数で43.5%増,高齢者比で0.5ポイント増となっている。なお,60年の高齢者比を男女別に見ると,男子では2.2%,女子では3.3%であり,女子の方が高くなっている。
高齢受刑者に対しては,その身体的,精神的状況に応じた処遇が行われているが,特に,老衰現象が相当程度に認められる者及び身体が虚弱であるために特別な処遇が必要と認められる者については,刑務作業を軽減し,医療的な配慮を加えるなどの措置がとられている。
昭和60年において保護観察所が新たに受理した保護観察対象者は,まず,仮出獄者数について見ると,1万7,795人であるが,このうち高齢者数は330人で,高齢者比は1.9%となっている。これは,高齢者比としては,矯正段階における2.3%よりも低いが,5年前に比べると,高齢者数で56.4%増,高齢者比で0.5ポイント増となっている。なお,60年の高齢者比を男女別に見ると,男子では1.8%であるのに対し,女子では3.5%であり,女子の方が高くなっている。
次いで,保護観察付執行猶予者数について見ると,7,180人であるが,このうち高齢者数は91人で,高齢者比は1.3%にすぎない。しかし,5年前に比べると,高齢者数で11.0%増,高齢者比で0.3ポイント増となっている。なお,昭和60年の高齢者比を男女別に見ると,男子では1.2%であるのに対し,女子では1.5%であり,女子の方が高くなっている。
このような高齢保護観察対象者に対しては,高齢者特有の個人的問題や保護環境面の障害等に応じて,個別的な処遇が実施されており,例えば更生保護会への委託などのほか,公共職業安定所や老人福祉機関等との連携の下に,就労先の確保や福祉施設への入所等についても鋭意努力が払われている。