矯正施設は,篤志面接委員や教講師のほかにも,矯正目的を達成するために必要な各種の援助を,民間協力者から受けている。
IV-71表は,昭和59年中に矯正施設の日課として経常的に実施される人出所時や入退院時の教育,生活指導,教科教育等の教育活動を援助した民間協力者を見たものである。行刑施設では,個人又は団体数で704,協力回数1万953回,協力延べ人員1万3,045人,被収容者の参加延べ人員12万2,721人となっている。少年院では,個人又は団体数で498,協力回数5,771回,協力延べ人員6,926人,被収容者の参加延べ人員11万4,849人である。また,IV-72表は,教育活動の内容として実施した被収容者による奉仕活動の実施状況であるが,このような活動を実施する上でも,その場所と機会の提供について民間協力者等の援助を得ている。いずれも被収容者の人間形成に役立っている。
IV-73表は,昭和59年中に矯正施設の教育行事を援助した民間協力者を見たものである。その内容は,講演,映画,演劇,演芸,音楽会や,盆踊り,運動会等の季節の催しなどである。行刑施設では,1,167の個人又は団体の協力を得,その協力回数は2,110回,協力人員は延べ1万7,678人,これに参加した被収容者は延べ63万4,387人である。少年院では,975の個人又は団体の協力を得,その協力回数は1,581回,協力人員は延べ2万1,966人,参加した少年は延べ8万3,845人である。
IV-72表 被収容者による奉仕活動の実施状況(昭和59年)
IV-73表 民間協力者の教育行事援助状況(昭和59年)
行刑施設の刑務作業(第2編第3章第2節の3刑務作業参照)では,1日平均4万3,011人が就業しており,作業実施上必要な各種の技術や労働安全衛生,職業訓練の学科や実技,職業的技能を習得させるための作業教育等の面で,公私の各種団体や個人等から専門的な指導などの援助を受けている。
少年院では,院外の事業所や学識経験者等に委嘱して,一般社会の職場で実習を受けさせる院外委嘱職業補導を行っている。昭和59年中に508人(住込み23人,通勤485人)の在院者がこの院外委嘱職業補導を受けている。
医療,衛生については,医師,歯科医師,病院,医師会,大学医学部等の協力により,被収容者の健康教育,専門的な治療等の援助を受けている。
また,これ以外にも多くの市民の理解と協力がある。例えば,毎年全国各地で行われる矯正展や,刑務作業製品展示即売会には,多数の市民が参加し,盆踊りや,運動会等の教育行事には地域婦人会や,幼稚園児が団体で参加し,被収容者の情操教育の内容を豊富なものにしている。
以上,見てきたように,民間協力者が被収容者の改善更生のために,積極的な援助を行ってきた功績は太き,い。また,その援助は,民間協力者自身の好意によるものであり,さらに,それに要する経費は,そのほとんどがこれら民間の人々の善意にゆだねられている。