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 昭和60年版 犯罪白書 第4編/第4章/第3節/1 

第3節 更生保護における保護司その他の民間協力者

1 保護司

 保護司は,法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員であるが,その実質は地域社会の代表として選ばれた民間篤志家であり,給与は支給されず,活動に要した費用の全部又は一部が実費弁償金として支給されるにすぎない。しかし,保護司は,更生保護における犯罪者処遇の中核を事実上支えており,その寄与するところは極めて大きい。保護司の使命としては,保護司法1条によって,「社会奉仕の精神をもって,犯罪をした者の改善及び更生を助けるとともに,犯罪の予防のため世論の啓発に努め,もって地域社会の浄化をはかり,個人及び公共の福祉に寄与すること」と定められ,また,保護司が具備すべき要件としては,同法3条によって,「[1]人格及び行動について,社会的信望を有すること。[2]職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること。[3]生活が安定していること。[4]健康で活動力を有すること。」が定められている。
 保護司は都道府県内をいくつかに分けて定めてある保護区にそれぞれ配置され,専門官である保護観察官と共に,地域の事情に通じた地域性と,柔軟なボランティアとしての民間性とを生かして,保護観察対象者の指導監督及び補導援護,刑務所在監者及び少年院在院者等の環境調整に当たるほか,地域社会の犯罪予防活動に努めている。昭和59年において保護観察及び環境調整を実施した人員は,保護観察対象者が,交通短期保護観察を除いて13万6,200人,環境調整対象者が8万9,123人に達しているが,地域差はあるものの,これを保護司の担当状況について見ると,保護司1人当たり平均して,保護観察対象者が2.9人,環境調整対象者が1.9人,合わせて4.7人である。
 保護司の定数は,昭和25年に全国で5万2,500人と定められて以来,現在まで変わっていないが,その実人員を男女別に示したのがIV-74表である。同表によれば,総数では,59年が4万7,773人と,保護観察事件数の増加を反映して増加傾向にあり,また,総数に占める女子の比率も上昇傾向にあつて,55年の18.8%が59年には19.7%に上昇している。

IV-74表 保護司の男女別構成比(昭和55年〜59年各1月1日現在)

 保護司の任期は2年であるが,再任を妨げないこととされている。昭和59年1月1日現在の在職年数について,その構成比を見ると,10年以上が47.4%,4年以上10年未満が26.7%,2年以上4年未満が12.2%,2年未満が13.7%と,10年以上の保護司が半数近くを占めるが,一方,新任保護司の数も1割を超えており,この比率は,前者が低下し後者が上昇する傾向にある。
 IV-75表及び同76表は,保護司の年齢,職業について,それぞれその構成比を示したものである。これらの表によれば,昭和55年以降,年齢については,50歳ないし60歳代の占める比率が上昇して,59年には70.3%に至っているが,平均年齢は約60歳であり,この年齢は,最近数年間においてほとんど変化がない。なお,近年,保護司の高年齢化を防ぐために,一部の県を除いて新任,再任の際に年齢制限を設けている。次いで,職業については,59年では,無職が22.2%と最も高く,以下,農林漁業19.9%,公務員・会社員17.0%,宗教家12.8%などの順となっており,55年に比べると農林漁業,宗教家の占める比率が低下し,公務員等の定年退職者や主婦を中心とした無職の比率が上昇していることが注目される。

IV-75表 保護司の年齢層別構成比(昭和55年〜59年各1月1日現在)

IV-76表 保護司の職業別構成比(昭和55年〜59年各1月1日現在)

 犯罪者処遇の成果は,処遇に当たる者の処遇能力に左右されるところが大きい。そこで,保護観察所においては,保護司に対する研修を定期的に実施し,処遇技術の向上に努めている。その実施状況を見ると,研修の種類としては,初めて保護司になった者に対する新任研修,経験年数2年未満の者に対する第1次研修,同2年以上4年未満の者に対する第2次研修,経験年数に関係なく原則として保護区ごとに行われる地域別定例研修,処遇上特別な配慮を必要とする対象者等に関する特別研修などがあり,昭和59年度においては,全国で,新任研修146回(受講者4,045人),第1次研修68回(同2,796人),第2次研修68回(同2,866人),地域別定例研修3,865回(同11万5,022人),特別研修325回(同7,855人)が実施されている。
 保護司は,保護区(昭和59年1月1日現在の保護区数は全国で883保護区,各保護区の保護司定員は平均60人である。)ごとに地区保護司会を組織し,これらが連合して保護観察所の管轄区域ごとに都府県保護司連盟を結成し,さらに,地方更生保護委員会の管轄区域ごとに地方保護司連盟,全国組織として社団法人全国保護司連盟がそれぞれ結成されている。これらの組織は,いずれも法的な根拠を有しない自主的なものであるが,保護司研修の運営,犯罪予防活動の推進,「社会を明るくする運動」の実施,保護司間の相互援助と連携,協力組織及びその他の社会資源の開拓と育成,保護観察所や地方自治体等関係機関・団体との連絡と協調など,保護司活動の推進に重要な役割を果たしている。