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 昭和60年版 犯罪白書 第4編/第3章/第5節/4 

4 更生保護における処遇

 昭和59年に保護観察所が受理した保護観察処分少年及び少年院仮退院者の,処分歴別構成比を見ると,IV-66表のとおりである。交通短期保護観察を除く保護観察処分少年では,処分歴のある者の占める比率は,総数では67.6%であり,その内訳は,少年院送致1.5%,教護院・養護施設送致1.3%,保護観察21.5%,審判不開始・不処分43.4%となっている。これを更に一般事件と交通事件に分けて見ると,一般事件は交通事件よりも,審判不開始・不処分,教護院・養護施設送致及び少年院送致において処分歴を有する者の占める率がやや高く,反対に,保護観察において処分歴を有する者の占める率が低い。次に,少年院仮退院者では,処分歴のある者の占める比率は,総数では80.6%となっており,その内訳は,少年院送致20.7%,教護院・養護施設送致5.0%,保護観察43.9%,審判不開始・不処分11.1%となっている。これを保護観察処分少年と比べると,少年院送致,教護院・養護施設送致及び保護観察の処分歴がある者の占める率の高いのが目立つ。長期処遇と短期処遇に分けて見ると,長期処遇では,少年院送致,教護院・養護施設送致の処分歴の占める率が著しく高い。

IV-66表 保護観察対象少年の処分歴別構成比(昭和59年)

 このような保護観察対象少年に対しては,第3編第2章第6節で述べたように,少年の特性や問題に応じて,再犯防止と改善更生のための処遇が行われている。特に,交通事犯やシンナー等薬物濫用事犯の保護観察対象少年の数が依然として増大しており,これに対する再犯防止のための適切な処遇方策が喫緊の課題となっている。昭和59年末現在,交通短期保護観察を除き,交通事犯の保護観察処分少年は,総数3万9,602人中1万1,608人(29.3%)に達し,また,シンナー等薬物濫用事犯については,保護観察処分少年では,総数3万9,602人中8,478人(21.4%),少年院仮退院者では,6,665人中1,849人(27.7%)に及んでいる。このため,保護観察所では,その資質及び環境等の特殊性から,このような少年に対して,通常の保護観察官と保護司の協働による個別処遇に加えて,集団処遇を積極的に実施している。これは,専門家による講義,討論会,視聴覚教材を活用した指導等を含む多彩な方法で,しかも,必要に応じ,保護者・引受人,保護司等関係者の参加を得て行われており,59年中に,交通短期保護観察を除く交通事犯の保護観察処分少年については35庁の保護観察所で547回(参加人員1万1,478人。うち,対象少年8,855人),また,シンナー等薬物濫用事犯の保護観察処分少年及び少年院仮退院者については33庁の保護観察所で100回(参加人員2,176人。うち,対象少年1,079人)の集団処遇が実施されている。