少年院では,家庭裁判所が少年院送致決定の際に指定した少年院の種別及び処遇に関する勧告・意見等を考慮して,第3編第2章第4節で述べたように,少年の特質や問題性に応じた矯正教育を実施している。
IV-65表は,昭和59年の新収容少年について,処遇区分別に処分歴の構成比を見たものである。処分歴を有する者の占める比率は,交通短期処遇が最も高くて86.1%であり,次いで,長期処遇の83.9%,一般短期処遇の79.8%となっている。このように,新収容少年で処分歴を有する者の占める率はいずれの区分においても高いが,交通短期処遇の率が特に高いのは,交通事犯で少年院に送致される者の中には,交通法規に対する遵法精神に欠け交通関係非行を累行し,何度も家庭裁判所へ送致された者が多いことによるものと思われる。処分歴を各処遇区分別に見ると,いずれも審判不開始・不処分の処分歴を有する者は51,1%ないし62.4%,保護観察の処分歴を有する者は59.7%ないし65.8%と極めて高い率を示している。また,少年院送致の処分歴を有する者は,長期処遇が26.7%で,一般短期処遇の0.2%及び交通短期処遇の1.1%に比べて著しく高率である。
IV-64表 少年一般保護事件終局処理人員中に占める再犯者の比率(昭和58年)
少年院に送致されてくる非行少年に対しては,個々の少年の必要性や特性に応じた特色ある有効な処遇方策が図られている。なお,短期処遇の運用も定着するなど,収容期間の弾力化や更生保護機関との処遇の一体化が推進されている。
VI-65表 新収容少年の処分歴別構成比(昭和59年)