家庭は,少年の成長と発達にとって基本的な環境であり,少年非行との関連が古くから着目されてきた。
非行少年の家庭の保護者及び生活程度について見ると,III-13表及びIII-14表のとおりである。7割強が実父母がそろい,9割弱が経済的に普通以上の家庭の少年となっている。このように,最近における非行少年においては従来,少年非行の原因として指摘されてきた親の欠損及び家庭の貧困の影響が希薄化していることを示すものといえる。
III-13表 一般保護少年の保護者の状況別構成比(昭和40年,50年,57年,58年)
III-14表 一般保護少年の保護者の生活程度別構成比(昭和40年,50年,57年,58年)
III-4図は,非行少年の保護者の養育態度を見たものである。保護者の養育態度に何らかの問題のあった少年はかなりの数に達するが,そのうち,大多数を占めるのは放任であり,甘やかし・過保護及び厳格がこれに次いでいる。
このような最近の家庭の養育状況から見て,両親の健在や経済生活の安定など形式的要件は具備しているものの,子女に対する基本的な保護的・教育的機能の低下している家庭が少なくなく,これが少年非行を生む家庭内の問題と関連しているものと見られる。
ところで,家庭内暴力は,昭和59年にはやや減少し,1,131人となっている。III-5図及びIII-6図は,この家庭内暴力事犯少年について,学職別構成比及び暴力の対象別構成比を見たものである。学職別では中学生が最も多く,37.8%を占めている。
暴力の対象別では,母親が62.0%で最も多く,以下,物(家財道具等)13.6%,父親12.4%の順となっている。
III-4図 保護者の養育態度別構成比(昭和59年)
III-5図 家庭内暴力少年の学職別構成比(昭和59年)
III-6図 家庭内暴力の対象別構成比(昭和59年)