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 昭和60年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/2 

2 終局裁判

 (1) 第 一 審
 昭和58年中の地方裁判所,家庭裁判所及び簡易裁判所による第一審裁判所としての終局裁判の結果を見たものが,II-9表及びII-10表である。

II-9表 罪名別地方・家庭裁判所終局処理人員(昭和58年)

II-10表 罪名別簡易裁判所終局処理人員(昭和58年)

 地方裁判所及び家庭裁判所の終局処理人員総数は,前年より484人増加して6万4,629人(地方裁判所の終局処理人員は,前年より516人増加して6万4,170人,家庭裁判所の終局処理人員は,前年より32人減少して459人である。)となっている。これを罪名別に見ると,前年と同様に覚せい剤取締法違反が1万5,511人(総数の24.0%)と最も多く,以下,業過9,438人(同14.6%),道交違反7,438人(同11.5%),窃盗5,287人(同8.2%),詐欺4,509人(同7.0%),傷害4,154人(同6.4%)などの順となっている。昭和51年から逐年増加を続けていた覚せい剤取締法違反は,前年より375人(2.4%)減少している。前年に比べて増加したのは,公職選挙法違反(1,078人,264.2%増),賭博・富くじ(846人,89.5%増),殺人(127人,14.0%増),放火(37人,8.5%増)などである。なお,総数のうち459人は,家庭裁判所の処理に係る少年に対する成人の刑事事件であって,懲役言渡人員285人中の278人(97.5%)は児童福祉法違反によるもの,罰金言渡人員153人中の76人(49.7%)は労働基準法違反によるものである。無罪率は,総数で0.1%である。
 簡易裁判所の通常手続による終局処理人員総数は,前年より453人(2.8%)減の1万5,990人である。懲役言渡人員中90.1%の1万2,241人が窃盗であり,罰金言渡人員中65.1%の1,284人は業過及び道交違反によるものである。無罪率は,総数では0.4%であるが,罪名別に見ると,業過の4.1%が際立って高い。簡易裁判所の略式命令手続によって,昭和58年中に罰金又は科料に処された者は,232万5,160人であり,罪名別構成比で見ると,業過及び道交違反が95.5%と圧倒的に多く,これに次ぐ傷害及び暴行を合わせても0.9%にとどまる。
 (2) 上訴審
 昭和58年に言い渡された第一審判決に対する上訴率を見ると,地方裁判所の判決に対しては9.9%,簡易裁判所の判決に対しては4.9%となっている。
 58年の高等裁判所の控訴受理人員は6,797人で,これを控訴申立当事者別に見ると,被告人側のみの申立てによるものは96.7%,検察官のみの申立てによるものは2.6%,双方からの申立てによるものは0.6%である。
 II-11表は,昭和58年中に高等裁判所が控訴審として処理した結果を罪名別に見たものである。終局処理人員総数は,前年より119人減の7,136人で,そのうち15.9%は控訴が取り下げられ,64.9%は控訴が棄却され,18.7%は原判決が破棄された上改めて裁判が言い渡され(破棄自判),0.2%は原裁判が破棄されて更に審理を尽くすべく第一審に差し戻され若しくは移送されている。これを罪名別に見ると,取下率は,覚せい剤取締法違反が24.4%,暴力行為等処罰法違反が24.2%,窃盗が23.1%と高く,破棄自判の率は,業過が29.6%,詐欺が27.1%と高い。破棄理由を見ると,破棄人員総数1,346人中45.6%の614人は量刑不当によるものであり,自判の結果原裁判が覆されて無罪となった者は48人である。なお,検察統計年報によれば,検察官が第一審の無罪判決を不服として控訴した事件のうち,58年中には65人の被告人に対し控訴審の判決が言い渡されているが,そのうち32人(49.2%)については,第一審判決が覆されて有罪と認められている。

II-11表 罪名別控訴審終局処理人員(昭和58年)

 昭和58年中に言い渡された控訴審の判決に対する上告率を見ると,全体では34.5%で,控訴率に比べると高くなっている。58年の最高裁判所の上告受理人員は2,028人であるが,そのうち検察官の申立てにかかるものは7人である。58年中に最高裁判所が上告審として終局処理した人員は,前年より119人減の2,013人で,その内訳は,上告取下げ293人(14.6%),上告棄却1,696人(84.3%),原裁判破棄17人(0.8%)などとなっている。