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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第5章/第4節 

第4節 外国人の日本における犯罪と被害

 I-71表は,昭和50年,58年及び59年における外国人登録法に基づく登録者及び外国人入国者を国籍別に示したものである。登録者総数は,59年には84万1,831人(前年より2万4,702人,3.0%増)となり,入国者総数も逐年増加して,59年には203万6,488人(同13万5,891人,7.1%増)となっている。登録者の国籍は80.9%が韓国・朝鮮であり,入国者の国籍で最も多いのは,中国となっている。

I-71表 国籍別外国人登録者・入国者数(昭和50年,58年,59年)

 I-72表は,昭和59年における外国人の交通関係業過及び道交違反を除く検察庁新規受理人員の罪名別及び国籍別状況を見たものである。新規受理人員総数は1万5,875人で,前年より442人(2.7%)減少しているが,罪名別に見ると,強盗,詐欺・背任,関税法違反及び麻薬取締法違反が前年より増加している。また,外国人登録法違反が全体の24.8%を占めているが,これに次いで多いのが窃盗(20.3%)で,以下,傷害(9.5%),覚せい剤取締法違反(6.0%)の順となっている。次に,国籍別に見ると,韓国・朝鮮が1万2,739人(80.2%)で最も多く,次いで多いのが中国の783人(4.9%)である。ちなみに,警察庁刑事局の資料によれば,59年に,外国人グループによる計画的な広域窃盗事件が525件発生しており,注目される。

I-72表 外国人の罪名・国籍別検察庁新規受理人員(昭和59年)

I-73表 退去強制事由別摘発人員(昭和55年〜59年)

 なお,昭和59年の外国人による出入国管理及び難民認定法違反の検察庁新規受理人員は622人で,前年より306人(96.8%)増加している。
 これに関連して,地方入国管理局において,同法に基づく退去強制手続がとられている事例について,最近5年間の退去強制事由別摘発人員を見ると,I-73表のとおりである。総数では,近年急増傾向を示し,昭和59年には,前年より2,062人(43.2%)増の6,830人に達しており,このうち相当数の者が,出稼ぎを目的に来日した者である。すなわち,不法残留者のうち79.5%を占める4,426人は,資格外活動をも伴っており,これと資格外活動だけで摘発された357人を合わせると,これら出稼ぎ目的で来日した者は4,783人となり,摘発者総数の70.0%を占めている。

I-74表 資格外活動者の活動内容(昭和59年)

 次に,これら4,783人の資格外活動の内容を男女別に見たものがI-74表である。女子が総数の92.7%を占め,その活動内容も,女子について見ると,ホステス,ストリッパーが91.9%となっている点が注目される。

I-75表 新受刑者の国籍別人員(昭和58年,59年)

 I-75表は,裁判が確定して新たに我が国の行刑施設に入所した外国人の数を見たものである。昭和59年における外国人新受刑者は921人であり,新受刑者総数3万2,060人の2.9%に当たるが,この比率には近年特に大きな変化は見られない。
 I-76表は,最近5年間に,日本国内において外国人が被害にあった刑法犯の認知件数を見たものである。総数で見ると,昭和59年では,8,989件で前年より232件(2.5%)減少している。罪名別に被害件数を見ると,窃盗が7,179件(79.9%)で最も多く,次いで,傷害が511件(5.7%),詐欺378件(4.2%),暴行230件(2.6%)の順になっている。前年より増加しているものは,強盗,傷害,恐喝,詐欺,横領,強姦などである。

I-76表 外国人が被害者である刑法犯の認知件数(昭和55年〜59年)