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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第5章/第5節 

第5節 日本人の国外における犯罪と被害

 日本人の出国者数は,法務省入国管理局の資料によれば,昭和40年代に入り急速に増加し,46年には外国人の入国者数を上回り,以後更に増加を続け,55年にいったん減少したが,56年から再び増加に転じ,59年には465万8,833人(前年より42万6,587人,10.1%増)となっている。これを渡航先別に見ると,アメリカ合衆国が34.1%,アジア地域が486.9%を占め,前年とほぼ同様の傾向となっている。

I-77表 日本人の国外における犯罪の態様別通報受理件数(昭和55年〜59年)

 最近5年間の日本人の国外における犯罪について,国際刑事警察機構等を通じて警察庁が通報を受理した件数は,I-77表のとおりである。通報受理件数は,昭和59年には,前年より31件(21.4%)減少して114件となっている。態様別の通報受理件数を見ると,関税・為替管理関係が38件で最も多く,次いで,麻薬・覚せい剤関係の29件である。殺人は前年6件であったが1件に減少し,性犯罪は前年2件であったが6件に増加している。上記総数についてその犯罪地域を見ると,韓国が44件で最も多く,以下,アメリカ合衆国(9件),台湾(8件),イギリス(7件),フィリピン(6件),タイ(6件)などの順となっており世界の各地に及んでいる(警察庁刑事局の資料による。)。
 次に,昭和57年から59年の3年間に,日本人が国外で被った犯罪被害のうち,直接人身に攻撃を加えられたもので,在外公館から外務省領事移住部に報告のあったものを見ると,I-78表のとおりである。被害人員は144人で,このうち,死亡が40人となっている。また,被害人員のうち,加害者が日本人であるものは15人である。ところで,被害人員の数を年次別に見ると,57年が25人,58年が38人,59年が81人となっており,日本人が国外で犯罪被害にあう数が増えていることが窺える。地域別に見ると,アメリカ合衆国が一番多く,次いでナイジェリアとなっている。ナイジェリアでは,58年に7人,59年に12人が被害を受けている。59年の事例を見ると,在留日本人駐在員がピストル,蛮刀等で武装した20人の強盗団に襲われ,家財道具一切を強取されたものや,会社の経理担当者2人が社員の給料を銀行から運搬中のところ,待ち伏せしていた犯人に襲われ,現金約900万円及び車を強取されたものなどがある。またパラグアイでは被害者7人中6人が,ブラジルでは被害者6人全員が殺害されており,その死亡率の高さが注目される。

I-78表 日本人の国外における犯罪(人身)被害人員(昭和57年〜59年)