我が国における麻薬取締法，あへん法，大麻取締法の各違反を総合して，その検挙状況について見ると，前掲Iー27表に示すとおりであり，昭和59年において，総数で検挙件数2,139件，検挙人員1,720人と，前年に比べて件数で11件(0.5%)の増加，人員で8人(0.5%)の減少となっている。事犯別で特に注目されるのは，大麻取締法違反の動向であって，52年以降1,000人台の検挙人員が続いており，59年では，前年に比べて13.0%上昇して1,391人と，麻薬事犯全体の80.9%を占めるに至っている。
　I-32表は，最近5年間における麻薬等の押収量を示したものである。麻薬等の押収量は年による増減が著しいが，昭和59年における押収量について見ると，ヘロイン，LSD，大麻は，前年より大幅に増加している。
　麻薬事犯を，厚生省薬務局の資料によって違反法令別に見ると，次のとおりである。
　麻薬取締法違反については，前述のとおり，覚せい剤の第一の流行が終息した昭和30年代から増加傾向を示してきたが，38年の法改正による罰則の強化等の対策が功を奏し，それ以降激減した。56年以降における検挙人員は，おおむね100人前後で推移していたが，59年は，前年に比べて43人増加し，132人となっている。違反態様別構成比では，59年において，譲渡・譲受，所持，密輸入の各事犯の順に多く，それぞれ47.0%，25.7%，23.5%となっている。使用事犯は各年次とも少なく，59年は3.8%である。密製造事犯は検挙される者がない年が多く，57年には4人が検挙されているが，59年は前年に引き続いて検挙された者はない。また，主な違反品目別の検挙人員は，ヘロイン事犯が30人，LSD事犯が70人と，それぞれ前年に比べて8人，33人増加している。

I-32表　麻薬等の押収量(昭和55年〜59年)

　あへん法違反の検挙人員は，昭和43年の1,148人を頂点として，その後，急速に減少し，最近10年以上の間は100人ないし200人台を上下していたところ，58年に増加して408人となったが，59年には再び減少して197人となった。違反態様別に見ると，そのほとんどが，けしの観賞を目的とした栽培事犯であり，59年では185人(93.9%)を占めている。
　大麻取締法違反について見ると，検挙人員は，昭和55年の1,433人を最高に最近ではやや減少傾向を示していたが，59年は，前年より160人増加して1,391人となっている。違反態様別の構成比では，59年において，所持，譲渡・譲受，密輸入の順に多く，それぞれ51.5%，28.8%，15.8%となっている。