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 昭和59年版 犯罪白書 第4編/第2章/第5節/2 

2 処遇の概要

 少年刑務所においては,少年受刑者のほかに,26歳未満の青年受刑者を収容して集団を編成し,処遇の充実を期している。少年受刑者を含む若年受刑者の処遇については,特に,職業訓練,教科教育及び生活指導に重点が置かれているが,これらの実施に当たっては,地域社会の人々からも多くの協力を受けている。

IV-41表 少年新受刑者の刑名・刑期別構成比(昭和40年,50年,56年〜58年)

 (1)職業訓練
 少年刑務所における重点的処遇の一つである職業訓練は,公認の資格・免許の取得を含め,出所後の自立更生に資することを目標として,特に積極的に実施されている。これらの職業訓練は,溶接科,自動車整備科,電気工事科,理容科,ボイラー運転科等多種目にわたり,少年刑務所を出所する者のうち,多くの者が,公認の資格・免許を取得し,又は職業的技能を習得して,出所後の就職に役立てている。

IV-42表 少年新受刑者中初入者の保護処分歴別人員(昭和56年〜58年)

 (2)教科教育
 青少年受刑者に対しては,教科教育も活発に行われている。特に,松本少年刑務所では,昭和30年4月から地元公立中学校の分校を設け,全国から義務教育未修了者のうち適格者を入学させ,修了者には本校の校長から卒業証書が授与されており,58年度は10人が授与された。また,松本,奈良及び盛岡の各少年刑務所では,地元県立高等学校の協力を得て高等学校の通信制課程の受講を実施しており,58年度には9人が高等学校卒業証書を授与されている。このほか,社会通信教育及び学校通信教育も実施されている。
 なお,法務総合研究所では,昭和57,58両年度に上記の中学校,高等学校の課程を修了した者を対象に,教科教育の処遇効果について,特別調査を実施した。その結果,教科教育には,単に学力の向上や資格の取得といった直接の効果だけでなく,一般的な生活態度の面においても,積極性や自信,自主性や協調性などをもたらす効果があることが認められた。また,特に高校課程の受講生については,この処遇を受けることによって,家族や保護者との間で,好ましい信頼関係をつくり出していることも明らかになった。
 (3)生活指導
 生活指導としては,青少年期の特性を十分考慮して,規律と教育を調和させながら,健全な社会復帰を目指して,入所時教育,集団訓練,体育活動,クラブ活動,読書指導,集会,各種行事,施設外教育,レクリエーション活動,進路指導,出所時教育などが計画的に実施されている。