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 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第3章/第3節/3 

3 保険金目的の放火

 保険金目的の放火は,建造物,住宅内の家財,倉庫内の商品等について,火災保険契約が締結されているのを利用し,あるいは,意図的に保険契約を締結した上で,住宅等の建造物に放火し,失火や第三者による放火を装って,火災保険金を詐取するものである。
 今回の調査の対象となったこの種事犯は44件であるが,その罪名は,建造物放火,詐欺,又はこれらの未遂となっており,延べ被告人数は68人である。そのうち,共犯形態で敢行された事件は40.9%の18件となっている。
 保険金目的の放火事件で特徴的な点は,複数回にわたって同一手口の犯行に及んでいる被告人が多く見られることであり,被告人実人員54人中,13人(24.1%)が2件以上の保険金目的の放火事件により起訴されている。
 この種事件の火災保険の契約状況を見ると,たまたま火災保険契約が締結されていることに乗じた犯行が28件(63.6%),計画的に火災保険契約を締結した上での犯行が13件(29.5%),保険金額を増額した上での犯行が3件(6.8%)となっている。
 犯行の動機を見ると,事業経営上の資金に窮したことによるものが29件(65.9%),その他の個人的な生活資金に窮したことによるものが15件(34.1%)となっているが,個別的に見ていくと,新築した自宅等のローン返済資金に窮して,これに放火して保険金を入手しようとした事例(3件),住宅分譲業者が売行き不振の商品たる住宅に放火して保険金を入手しようとした事例(1件)などが注目される。
 最後に,犯行の結果を見ると,保険金の取得に至ったものは44件中21件にすぎない。