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2 収賄事犯 公務員犯罪の中でも,収賄事犯は,公務執行の公正に対する国民一般の不信を招き,遵法意識を低下させるなど,その及ぼす影響が深刻かつ広範である。しかし,この種事犯は,収賄者,贈賄者の双方が罰せられ,特定の被害者が存在しないので,極めて潜在性が強く,その取締りが困難なこともあり,相当数の暗数があると考えられる。このように検挙が困難なため,犯行と検挙の時間的間隔が長くなるので,本項では,長期的にとらえた検挙状況の推移を見ることとする。
I-29表は,昭和49年から53年までの5年間(以下本節において「前期」という。)と54年から58年までの5年間(以下本節において「後期」という。)にそれぞれ収賄罪で検挙された公務員(公社公団職員などの,いわゆる「みなす公務員」を含む。)を,所属別に,上位10文まで掲げて比較してみたものである。収賄事件の検挙人員総数について見ると,後期は,前期に比べて262人(19.8%)減の1,060人となっている。職種別では,前期は3位まで,後期は4位までを地方公務員が占めており,しかも,前期,後期で順位が逆転しているものの,1位と2位は土木・建築関係の地方公務員及び地方公共団体の各種議員であることも変わらず,この両者が検挙人員総数に占める比率は,前期で49.8%,後期で49.0%に達している。国家公務員について見ると,前期は建設省関係が30人で5位,運輸省関係が25人で7位,労働省関係が19人で8位であったが,後期は農林水産省関係が26人で5位,郵政省関係が22人で7位,文部省関係が15人で9位となっている。 最近における収賄事犯は,依然として各種の土木建設工事等の施行をめぐる事犯及び各種の物品資財の購入をめぐる事犯が多いが,地方公共団体の議長や役員等の選任をめぐる事犯も目立ってきている。 I-29表 収賄公務員の所属別検挙人員(昭和49年〜53年,54年〜58年) なお,昭和58年中に検挙された事件の賄賂総額は2億370万円で,収賄者1人当たりの収賄額は92万円となっている。この種事犯の発生を防止するためには,検挙の徹底を期するとともに,厳正な刑罰を科する必要があると思われる。I-30表は,収賄事件の第一審における科刑状況を見たものである。昭和57年に,懲役刑に処せられた者は160人で,そのうち,懲役1年以上の刑に処せられた者の比率は過去5年間で最高の63.8%となり,他方,執行猶予率は94.4%で,前年より0.8ポイント低下している。なお,57年の実刑人員は9人で,懲役3年が2人,1年以上2年未満が5人,6月以上1年未満が2人となっている。 I-30表 収賄事件の第一審科刑状況(昭和53年〜57年) |