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 昭和59年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/1 

1 概  況

 I-26表は,最近3年間において検察庁が受理した公務員による道交違反を除く犯罪を罪名別に示したものである。昭和58年の受理人員総数は,前年より340人(1.5%)減少して2万1,640人となっている。罪名別の受理人員を見ると,業過が1万7,158人(刑法犯の82.7%,全体の79.3%)と圧倒的に多く,58年の検察庁の新規受理人員総数(道交違反を除く。)における業過の構成比(刑法犯の57.6%,全体の48.2%)と比較しても,公務員の場合の方が,業過の占める割合が著しく高くなっている。58年における特別法犯の受理人員は883人で,56年の577人,57年の570人に比べると5割強の増加を示している。従来,大規模な選挙が行われた年は,公職選挙法違反の受理人員が相当数に上っていることから見て,58年には,統一地方選挙,参議院選挙及び衆議院選挙が施行されていることがその主な理由であると思われる。

I-26表 公務員犯罪の罪名別検察庁新規受理人員(昭和56年〜58年)

I-27表 公務員犯罪の罪名別検察庁終局処理人員(昭和56年〜58年)

I-28表 付審判請求事件決定状況(昭和53年〜57年)

 I-27表は,最近3年間における道交違反を除く公務員犯罪の終局処理状況を示したものである。昭和58年における起訴人員総数は,前年より648人増の1万3,018人となっている。起訴率は,全体で60.7%である。罪名別に見ると,刑法犯では,収賄が71.0%と最も高く,業過の68.5%がこれに次いでいる。職権濫用に対する起訴は例年極めてまれで,58年においてもすべて不起訴とされているが,これは,この種事件の大部分が,警察,検察,裁判,矯正等の職員に対する告訴・告発事件であって,事実自体が犯罪となちないもの,あるいは,犯罪の嫌疑がないものなどが多いためである。この種事件については,不起訴処分に不服がある者は,裁判所に対して付審判(準起訴とも呼ばれる。)の請求をすることができる。I-28表は,付審判請求に対する裁判所の決定状況を見たものであるが,この5年間で付審判の決定がなされたのは,55年,56年に各1件あるだけである。