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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第4章/第1節/3 

3 科刑状況等

 暴力犯罪に対しては,いずれの法域においても重い法定刑が定められている。例えば,故意による殺人(一級謀殺)に対しては,連邦,ニューヨーク州では無期拘禁刑,カリフォルニア州では死刑又は無期を含む25年以一上の拘禁刑などと定められている。近年,暴力犯罪の増加に伴い,これに対する方策として,法定刑の引き上げ,量刑における裁判官の裁量権の縮減などの措置を講じる法域が増えてきているが,連邦レベルでも司法長官の諮問に応ずる特別委員会を設けて,暴力犯罪者に対する訴訟手続,科刑方法の改革を審議させ,法案を議会に提出するなど積極的な姿勢が見受けられる。

II-66表 連邦地方裁判所における暴力犯罪の科刑状況アメリカ(1981司法年度)

 1981司法年度における連邦地方裁判所の暴力犯罪に対する終局処理の状況を見ると,有罪率は,殺人で90.9%,強姦で92.5%,強盗で96.8%となっている。II-66表は,同年度中における連邦地方裁判所で有罪の言渡しを受けた暴力犯罪被告人についてその科刑状況を見たものである。有期拘禁刑(我が国の実刑に当たる。)を選択された者の比率は全犯罪で33%であるのに対し,暴力犯罪では殺人45%,強盗63%,暴行47%,強姦59%であり,その比率は高くなっている。1981年度のカリフォルニア州での運用を見ると,殺人の87.6%,強姦の82.6%,強盗の72.2%が拘禁刑を科せられている。
 なお,受刑者総数に占める暴力犯罪受刑者の比率は,全州について見ると1974年に52%だったものが79年では57%に上昇している。