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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第4章/第1節/2 

2 検挙状況等

 (1)検挙人員及び検挙率
 II-64表は,最近5年間における暴力犯罪の検挙人員及び検挙率の推移を見たものである。検挙人員については,強姦及び傷害がほぼ一貫して増加し,殺人及び強盗は1980年から増加傾向に転じている。検挙率は,各年でその基礎がやや異なるが,おおよその傾向を知ることは可能であり,最近5年間では,各犯罪とも低下傾向にある。ちなみに,1960年の検挙率が殺人で92%,強姦で73%,強盗で39%,傷害で76%であったことと比べると,最近の検挙率の低下は注目に値する。

II-64表 暴力犯罪の検挙人員及び検挙率アメリカ(1977年〜81年)

 (2)犯人像
 1981年に暴力犯罪で検挙された者について,その属性を見ると,性別では,男子が89.9%を占めている。18歳未満の者の検挙人員に占める比率を見ると,暴力犯罪全体では18.5%,殺人で9.1%,強姦で14.8%,強盗で28.6%,傷害で14.0%であり,指標犯罪全体で33.5%,財産犯罪で37.4%であるのと比べかなり低くなっている。また,財産犯罪の検挙人員に占める比率は黒人が31.2%,白人が67.1%,その他が1.7%となっているのに対し,暴力犯罪では,黒人45.7%,白人53.0%,その他1.3%となっており,暴力犯罪に占める黒人の比率が高い。
 殺人の動機について最近5年間の状況を見ると,ほぼ同傾向であって,口論の末にというのが最も多く,1981年では42.2%を占めている。次いで多いのが,強盗,強姦等他の犯罪を実行するためで,1981年では17.2%に達している。また,1980司法年度(1980年7月1日から81年6月30日まで)中に全国の連邦地方裁判所で終局処分のあった暴力犯罪被告人のうち,殺人の75.6%,強盗の87.0%,暴行の70.0%が,過去に何らかの罪で処分を受けていたという結果が出ている。
 (3)被害者像
 連邦司法省が商務省国勢調査局と協力して実施している犯罪被害者調査によると,1980年における暴力犯罪の被害者のうち,12歳から25歳までの者の占める比率が高くなっており,性別では,男子が女子の倍近くを占め,人種で見ると黒人が多い。また,被害者のうち25%の者が,何らかの財産的損失を被っている。
 II-65表は,最近5年間における殺人について,犯人と被害者の関係を見たものであるが,5年間ではほとんど変動が見られない。被害者が家族・友人等犯行前から犯人と面識のあった比率は各年とも50%を超えている。これに対し,強姦,強盗では面識のある者相互間の犯行の比率は殺人と比べかなり低い。ちなみに,1973年から79年までの平均で見ると,強姦の65%,強盗の76%が犯人と被害者との間に面識がない。

II-65表 殺人における犯人と被害者との関係アメリカ(1977年〜81年)